【インタビュー】長崎県弁護士会長・中村尚志さん(47) 拘置支所停止、国と協議を

県弁護士会の新会長に就任した中村さん

 〈県弁護士会の新会長に4月就任。長崎拘置支所の収容業務停止を巡る問題など力を入れている取り組みや抱負を聞いた〉

 -被告人らを収容していた長崎拘置支所(長崎市白鳥町)の収容業務が昨年11月23日に停止した。その影響と今後の対応は。
 収容業務は諫早市小川町の長崎刑務所に集約され、長崎市を拠点とする弁護士の接見や家族らとの面会時の負担が増えている。社会復帰を目指す被告人にとっても更生に支障をきたす可能性がある。会として反対する会長声明の発出、長崎刑務所との協議、シンポジウムなどを展開したが、刑事施設の停止や廃止は全国的な傾向で、効果には限界がある。本年度は日弁連を巻き込み、法務省と協議、折衝する場を設けるなど全国的な問題として取り組みたい。

 -弁護士活動で力を入れてきたことは。
 非行を犯した少年の立ち直りや児童虐待、いじめなど子どもの人権に関わる問題。少年審判を受ける少年に国費で弁護士を付ける国選付添人制度では、2009年から22年まで日弁連の全面的国選付添人制度実現本部の委員を務めた。この制度の対象事件は、14年の少年法改正で大幅に拡大したが、より多くの支援や助言を必要とするはずの未熟な少年に国費で付添人が付かないケースもある。少年の主張を聞き、適正に事実認定されるよう、そして少年の立ち直りを援助するため、全ての事件の全ての少年に国費で付添人を付けるべきだ。

 -印象深い裁判は。
 原爆症認定集団訴訟。被爆者の方々と話す中で、当時の凄惨(せいさん)な体験をはじめ、自身の病気や健康への不安、差別などについて聞き、苦しみが原爆投下の日からずっと続いていると感じた。被爆者個々の救済と同時に、核兵器の残虐性を主張し、核兵器廃絶を訴えることも目的だった。それだけに、唯一の戦争被爆国である日本政府が(21年発効の)核兵器禁止条約に署名・批准しないことは非常に残念。

 -抱負は。
 会員同士の交流を深めたい。全国的に弁護士の不祥事が起きているが、個人が抱える問題を他の弁護士らに相談できれば防げたものもあったと思う。コロナ禍を機に、会の各種会議もウェブ開催が増えたが、会員の孤立、不祥事の防止に向けて、引き続きリアルでの交流に力を入れたい。

 【略歴】なかむら・なおし 長崎市出身。早稲田大法学部卒。2006年に弁護士登録。県弁護士会事務局長、同会副会長を歴任。仕事の信条は丁寧さと誠実さ。趣味は読書。甘い物好きで「コロナ禍にはスイーツ作りにはまった」と話す。

© 株式会社長崎新聞社