【浦和×鹿島戦】攻撃的サッカーを目指す浦和レッズが抱える「欠陥」(2)鹿島2点目を生んだ浦和SB石原広教の「寄せ」とヘグモ監督に「求める」決断

後半、2点差を追いついた浦和レッズ。ヘグモ監督の目指す攻撃的サッカーで今後、上位争いするためには「決断」が必要かもしれない。撮影/原壮史(Sony α1使用)

明治安田J1リーグ第19節、浦和レッズ(以後、浦和)対鹿島アントラーズ(以後、鹿島)戦が行なわれた。試合は前半に鹿島が2点を挙げ、後半になって浦和も2点を返して2-2のドローに終わった。

安西幸輝トラップミスに対する「理想の守備」

この試合を通して見れば、失点を重ねる浦和の問題点がよくわかる。コラム前半で分析した鹿島の先制点に続いて、42分の鹿島の追加点の場面を解説していこう。
右サイドから鹿島のセンターハーフ佐野海舟がドリブルでポケットに侵入する。マイナスのクロスを入れるが、マリウス・ホイブラーテンにクリアされる。そのボールに反応した左サイドバック(以後、SB)の安西幸輝が、ペナルティエリア中央にいた鈴木にパスを送り、鈴木が右足でシュート。安居海渡の股の下を抜けたボールは、ゴールキーパー(以後、GK)西川周作の横を抜けてネットに突き刺さった。

この場面、安西がトラップミスをしている。そのときに右SB石原広教はもっとボールに寄せていくべきだ。もし、センターバック(以後、CB)の選手ならば、安西のトラップミスを見逃さなかったはずだ。理想の守備としては、石原はトラップミスしたボールに素早く寄せて中を切り、安西を縦に行かせるように守るほうがいい。さらに、ここでは、鈴木が一歩も動いていないのである。安西にボールをよこせと手で合図している鈴木がフリーになっている。浦和は、ペナルティエリアの中に7人もいるのだから、ここはCBが鈴木をケアしないとならない。人数が足りているのだから、鈴木をフリーにし過ぎていることが問題である。
鈴木はワントップで、浦和にはCBが2枚いるのだから、どちらかが鈴木についてもう1人はサポートに入る。石原が中を切るような守備をして安西を縦に行かせていれば、浦和のCBのどちらかがポジションを離れても、鈴木をケアしに行っていたかもしれない。ペナルティエリアの中に人数が7人いても、最後は人をマークしないとやられる確率が高まってしまうのである。CBにとっては「鈴木に行くか行かないか」難しい選択だったのは確かなことなのだが。

両SBが同時に高い位置をとる浦和の「今後」

77分に浦和が1点をとって追い上げた場面。右サイドの石原から伊藤敦樹にミドルパスが出される。ボールに追いついた伊藤は、ドリブルでペナルティエリアに侵入して、マイナス気味のパスを中央に入れる。後ろから走り込んできた武田英寿が左足でゴール右下に決めた。
伊藤がペナルティエリアに入ったときに、FWブライアン・リンセンがファーサイドに流れる動きをする。本来ならば、右CBの植田直通がリンセンをケアしなければならない。しかし、リンセンがファーサイドに流れたことで、伊藤のクロスの選択肢がペナルティエリア中央か、それともリンセンへか、と2つに増える。濃野公人がリンセンへのクロスを警戒して横に入ってくる。そして、植田はシュートブロックできる位置に立つ。
しかし、リンセンの動きによってペナルティマーク付近がガラ空きになる。そこに武田が走り込んでシュートを決めるのだが、ここではマイナスのクロスへの対応の難しさが顔を出す。
なぜマイナスのクロスの対応が難しいのかと言えば、CBは基本的にボールとマークする人を同一視野に収めなければならない。しかし、マイナスのクロスに対しては、CBがボールウォッチャーになって、人を見失ってしまうことがしばしばある。だから、このクロスに対する対応が難しいのである。
浦和は、アディショナルタイムで武田のフリーキックによって同点に追いつく。前節のセレッソ大阪戦での失点を思い起こさせる武田のシュートだった。
GKの早川友基がファーサイドよりに立って、3歩前に出てポジショニングをする。おそらく、GKとディフェンス陣の間にボールを蹴られると想定しての位置どりだろう。しかし、GKにとってニアサイドを破られることは屈辱的なことなので、もう少しニアサイドを意識したポジショニングをしていれば、ボールには触れたはずだ。しかし、あの場面での武田のシュートが素晴らしかったことは疑いの余地がない。

浦和は攻撃的なサッカーを目指しているので、両SBが同時に高い位置をとることを「よし」としているのだろう。だが、これから浦和と対戦するチームはCBとSBの間に人を走らせるやり方をとってくるはずだ。そのためにも、渡邊のSBとしての適正を判断して、リスクマネージメントをとる選手起用と戦術も必要となってくる。
このまま同じやり方を続けていても、先制点を奪われて追いかける試合展開を強いられることになる。ヘグモ監督の決断にすべてはかかっている。

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