のり不作、値上げの波 仕入れ値高騰でメーカーやおにぎり専門店

のり高騰の影響を受けているおにぎり専門店(広島市中区)

 のりの価格高騰の影響が広がっている。主要産地である九州の有明海産の不作が主な要因で、平均単価は10年前の約2倍。のりメーカーやスーパー、おにぎり専門店と、幅広い事業者が値上げを余儀なくされている。

 のりメーカーのやま磯(広島市安芸区)は、3月までの買い付けシーズンの仕入れ値が前年の最大1・8倍に膨らんだ。6月、家庭用の味付けのりやふりかけの大半で、値上げか内容量の削減に踏み切った。主力商品の「朝めし海苔(のり)味カップ」は価格を据え置き、32枚入りを26枚に減らした。昨年に378円から453円に値上げしたばかりだった。

 磯部玄士郎社長は「この50年間で経験がないほど仕入れ値が上がった。買ってもらいにくくなる不安はあるが、自助努力では吸収できない。のりが希少なものになりつつある」とため息をつく。

 丸徳海苔(西区)も6月から、主力商品の「広島かき味のり」の価格を変えずに40枚入りを36枚に減らす取り組みを進めている。ふりかけ製造の田中食品(同)は、仕入れ先の産地を広げて、品質を落とさずに少しでも安いのりを調達するなどして対応している。菅野喜修(よしなお)管理本部長は「ふりかけは、のりの量を減らすと見た目も風味も悪くなる。バランスは崩せない」と説明する。

 全国漁連のり事業推進協議会によると、国内ののり生産枚数は2018~21年度に60億枚台で推移していた。22年度は約48億4300万枚、23年度は約49億3600万枚に落ち込み、1枚当たりの平均単価は23年度に21・14円と10年前の2・3倍に上がった。

 水産庁によると、温暖化に伴う海水温の上昇で養殖できる期間が短くなったことや、川から海に流れ込む栄養塩類の減少などが要因だという。

 影響は小売店にも広がる。広島市内でスーパー2店を運営するたかもり(南区)は半年ほど前、店で作る巻きずし1本の価格を1割増の400円台に引き上げた。のり1枚の仕入れ値が倍になったため。この2年間、売り場にのりを並べられない事態も発生した。伊木英人副社長は「のりは高いので、安くていいものがなければ無理して仕入れない」と明かす。

 広島市内で「おにぎり仁多屋」を展開するマルシン(中区)は4月に一部商品を値上げした。のりの仕入れ値が前年の1・3倍になり、円安によるエビやイクラといった具材の値上がりも響いた。森岡伸吾会長は「生産量自体が少ないから、質がいいのりを確保するのは大変。今後さらなる高騰も覚悟している」と厳しい見方を示す。

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