『クマにあったらどうするか』売れ行き3倍に 売上データの分析から見えてきた背景とは

書籍『クマにあったらどうするか』(ちくま文庫/2014年刊行)の直近1年間販売部数(2023年6月~2024年5月)が、例年比の約3倍にまで増加したことが筑摩書房より発表された。また売上データに関する分析結果も合わせて発表されている。

本書は2004年に木楽舎から単行本が出たのち、筑摩書房が2014年にちくま文庫として刊行された書籍。クマ撃ち猟師でありながら「クマは私のお師匠さん」と言い切る姉崎等に、アイヌ語研究を行う在野の言語学者・片山龍峯が膨大な量のインタビューを行い、1冊にまとめた。

一般的に12月ごろには冬眠に入るとされる野生のクマ。しかし2023年から2024年
にかけての冬はクマの出没が相次いでおり、季節によってクマに気を付けたり安心したりといった、これまでの常識が通用しなくなっていることと本書の売れ行きの伸びが連動しているのだという。

これまでのエリア別の販売シェア(2022年11月~2023年5月)を見てみると、全体の40%以上を北海道・東北が占めており、本書は日本で唯一ヒグマの生息する北海道と、ツキノワグマの生息地域が広がる東北地方を中心に読まれてきた。ただ2023年11月~2024年5月の期間でシェアを再計算すると、北海道・東北以外のエリアが占める割合が57%から75%まで急上昇した(いずれもネット書店を除いて計算)。

筑摩書房は販売シェアの変化について、東京や西日本も含めて広範な地域でクマの出没や被害が報告されていることと連動した動きであると考察した。

生涯クマと対峙しクマに学び続けた姉崎による「超実践的クマ対処法」はもちろんのこと、そこで語られる「自然と人間とのあるべき関係性、人間とクマの目指すべき共存の形」についての深い知恵などーー。クマをさまざまな視点から映した本書は人間と自然の境界線が変化している現代を生きるうえでヒントに成り得る書籍だ。

(文=リアルサウンド ブック編集部)

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