親に抱かれて餓死する子ども、ガザを覆う飢餓 「一人ひとり死んでいくのを待つだけ」

食糧援助を求めて並ぶ子どもたち=13日、パレスチナ自治区ガザ地区北部のジャバリヤ難民キャンプ/Omar Al-Qattaa/AFP/Getty Images

(CNN) ユニス君は意識が混濁した状態で緑のマットレスに横たわっていた。パレスチナ自治区ガザ地区南部のナセル病院。眠りに落ちては目を覚ます繰り返しの中で、茶色く長いまつげが落ちくぼんだ青白い顔の上で揺れ動く。

母親の腕に抱かれた9歳のユニス君は、栄養失調と脱水症状で衰弱し切っていた。やせ細った脚から青いジョギングパンツが垂れ下がり、オレンジ色のTシャツからは小さな肋骨(ろっこつ)が浮き出していた。

「良心のある人たちに呼びかけます。息子が治療を受けられるよう、私を助けてください。息子が普通に戻れるように」。ハンユニスの病院で先週、CNNの取材に応じた母のガニマ・ジュマさんはそう語った。「私は目の前で息子を失いかけています」

2カ月前、イスラエルが南部ラファに対する攻撃を強める中で、一家は避難を強いられた。テント村に近いアスダアの汚染された海岸での暮らしは、十分な食べ物も水も手に入らず、猛暑から身を守る日陰さえなかった。

「戦争と侵略のために何度も移動を強いられた。生活は苦しい」と母親は訴える。「頭上を覆うテントさえない」

イスラエルが続けている戦争のためにガザ地区の医療は崩壊し、栄養失調の子どもの手当てもできない状況にある。医師がCNNに語ったところによると、赤ちゃんのミルクを求める親も追い返すしかなく、慢性疾患に重度の飢餓が重なった若い患者の重症度を判定することさえできない。

ガザへの支援物資搬入は妨げられ、自分の子どもが餓死するのを見ていることしかできないと親たちは言う。

ガザ当局の22日の発表によると、少なくとも34人の子どもが栄養失調で命を落とした。支援団体の立ち入りが制限されているため実態は把握できておらず、実際にはもっと多くの死者が出ている可能性もある。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は今月に入り、5万人以上の子どもが急性の栄養失調で治療を必要としていると発表した。

深刻な水不足

ガザ北部では南部以上に長い間、子どもたちが食料不足に苦しんでいる。ジャバリヤ難民キャンプでは子どもたちが給水車の前に行列を作り、顔から汗を噴き出しながら、散乱するがれきを縫って通りを歩く。

別の数十人は水を求めて集まり、近くでは支援団体が大きな鍋からスープを注いで配っていた。

そうした食事ときれいな水が手に入ることはめったにない。ガザ北部の人たちは、最近では汚染された水を飲むしかないと証言した。そうした水は脱水症状を改善する役には立たず、感染症の原因にしかならない。

ガザに入る援助物資の量に「制限はない」とイスラエルは主張する。しかしトラックに対する検査や陸路の制限、激しい爆撃のために、援助物資はほとんど届かない。たとえガザに入れたとしても、飢えた人たちが車列に殺到して配給が妨げられる危険がある。

「私たちには援助として受け取る水しかない。みんながどれほど苦しんでいるかは言葉にできない」とハッサン・カラシュさんは言う。「私たちは病気で、水を運ぶ力もない。給水管は壊れていて、水の設備がない」

ガザ北部の住民は、水道から水が出ないため、めったに来ない支援に頼るしかないと訴える。UNRWAの先週の発表によると、8カ月に及ぶ爆撃で、ガザ地区の水や衛生設備は少なくとも67%が破壊されたり破損したりしている。国連環境計画によると、ガザの排水処理工場は5施設全てが停止した。

ガザ中部のアクサ殉教者病院では、5歳の女の子のラザンちゃんが赤くただれた指に金の指輪をはめていた。台車に寝かされたラザンちゃんの灰色の目はうつろだった。

「この子は戦争で変わってしまった」とおばのウム・ラザン・メイテムさんは話す。ラザンちゃんは栄養失調のために皮膚炎を患っているといい、「めいに与えられるものがない。市場は何もかも高すぎるか、売っていないかのどちらかだ」と訴えた。

「私たちに命はない」

新生児や妊婦は栄養失調や脱水の危険が最も大きい。妊婦の栄養が足りなければ早産が増え、生まれた子どもは低体重のために命を落とす。

ガザ北部のカマルアドワン病院の医師たちは、生後わずか4日だった女児のアマルちゃんを救えなかった。

CNNが死の直前に撮影した映像の中で、保育器の中のアマルちゃんは激しくあえいでいた。母のサマヘルさんは2カ月の早産で出産。アマルちゃんの小さなピンク色のつま先は、プラスチックチューブに覆われていた。

「赤ん坊たちが死んでいく。それは神が決めたことだが、人間が引き起こした」。アマルちゃんが22日に息を引き取った後、父のアフメド・マカトさんはCNNにそう語った。マカトさんによると、妻のサマヘルさんは妊娠中の何カ月もの間、十分な睡眠も食事も水も取ることができなかった。

「ここのベッドにいる全員が死の危険にさらされている。我々は、この子たちが一人ひとり死んでいくのを待っている」。そう語るマカトさんの声は震えていた。「私たちに命はない」

ハンユニスにいた4歳のアフマド君は、栄養失調で黄疸(おうだん)にかかっていた。父のイスマイル・マディさんは「このままでは息子は生き延びられない」と語って米政府に介入を訴えた。その数日後、アフマド君は死亡した。

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