ワンオペでの夜泣きは、孤独すぎてつらすぎる・・・。「どうして泣きやまないの?」に振りまわされて【「よなきごや」著者インタビュー】

「よなきごや」の連載のきっかけとなった、かねもとさんがTwitter(現、X)にアップした3ページのまんがより。(画像提供/マイナビ子育て)

今、注目されているまんが「よなきごや」は、著者のかねもとさん自身が子どもの夜泣きに悩み、へとへとになった経験から生まれたのだと言います。
最初の3ページのまんがは、かねもとさんがまだまんが家になっていないころ、第2子が生まれて1年ぐらいたったときに描いて、SNSに出したものでした。その内容に続々とコメントが届いたと言います。
「よなきごや」誕生のエピソードや、読者から届く声などについて聞きました。
全2回のインタビューの2回目です。

「私がベッドで朝まで寝たの、いつが最後だっけ…」長男の夜泣きがひどく眠れない日々。悩みに孤独感も【「よなきごや」著者インタビュー】

一度は断念したまんが家。軽い気持ちでアップした夜泣きまんがが大バズリ!!

「よなきごや」第5話「本当は『完璧な母』じゃない私」より。(画像提供/マイナビ子育て)

――かねもとさんには小学校6年生の長男、小学校2年生の長女がいます。育児系のまんがはいつごろ描き始めたのでしょうか。

かねもとさん (以下敬称略) 20代からまんが家になりたいと思ってトライしていましたが、雑誌に採用されることはなく、上の子の妊娠がわかったときに断念しました。その後、嵐のような育児が始まり、ペンを持つひまなんてないって感じでしたが、下の子を出産したころ、SNSに育児まんがをアップするのがすごくはやってたんです。
「昔、まんがを描いてたんだ」って話をママ友にしたら「育児まんがを描いてみなよ」って背中を押されて、育児マンガやイラストをTwitter(現、X)などにアップしはじめました。そのなかで「よなきごや」も描きました。

――アップしたまんがはどのような内容でしたか。

かねもと 「よなきごや」のプロローグみたいなものです。それがびっくりするほどバズって、リツイートが3万件にも!みんな夜泣きに悩んでいて、こういう場所がほしいと感じていたんだなあ、私と一緒だなあと喜んでいたところ、知り合いの編集さんが声をかけてくれて、「よなきごや」ってタイトルで連載が始まることになりました。

――「よなきごや」はかねもとさんもほしかった場所ですか。

かねもと そうです。下の子はほぼ夜泣きをしない子でしたが、上の子は本当に毎日夜泣きが大変で、ほぼひと晩じゅう抱っこして部屋の中を歩きまわっていました。ひたすら部屋の中をぐるぐるぐるぐる・・・。
ドアを開けると、赤ちゃんがいくら泣いても気兼ねしなくていい防音の部屋があって、赤ちゃんグッズはなんでもそろっていて、ママがリラックスできるお茶なんかも置いてあるのが「よなきごや」。そんな「小屋」があるといいなあと妄想していました。

シニアから学生まで幅広い世代の人が「よなきごやがほしい」と言ってくれる

「よなきごや」第6話「おばあちゃんと夜泣き」より。(画像提供/マイナビ子育て)

――まんがの中の「よなきごや」は街中にあります。

かねもと 「よなきごや」は常設ではなくて、必要としている人の近くに「ふっ」と現れるんです。現れる場所は異なるので、まんがをよく見てもらえると、まわりの風景がいつも違うことがわかると思います。夜泣きに疲れたママの近くに現れてくれる・・・。

私自身は、夜中に泣いている赤ちゃんを抱っこして1人で外に出る勇気はなかったですが、昔のお母さんは子どもが夜泣きをしたら、おんぶして外に連れ出したりしていたみたいです。そんな声をまんがの感想に寄せてくださった方がいて、「おばあちゃんと夜泣き」のストーリーのヒントにさせていただきました。

――若いママだけでなく、年配の人も読んでいるんですね。

かねもと ありがたいことに、かなり幅広い年齢層の方が読んでくださっています。保育系の勉強をしているという大学生から「あんな場所があればいいと思いました」という感想をいただいたり、子どもが成人した方から「20年前のことを思い出して泣きました」とコメントをいただいたり。
でも、やっぱり一番多いのはワンオペ育児真っ最中のママからの声で、「よなきごやが本当にあれば救われるのに」という声がものすごく多いです。

――育児の「大変」はほかにもいろいろありますが、夜泣きはとくに悩みが大きいと感じますか。

かねもと 育児の三大悩みは「寝ない 食べない 泣きやまない」と言われたりしますよね。「寝ない」「泣きやまない」の夜泣きは、三大悩みの二つが含まれていることになるので、子育ての悩みの中で相当大きな比重を占めているのではないでしょうか。
しかも夜って静かじゃないですか。今、この時間起きているのは私とこの子だけなんじゃないかって孤独感も影響している気がします。

夜泣きでボロボロの妻に「僕は何をすればいいか教えて」と聞いてほしい

「よなきごや」第7話「俺が育児するなんて!」より。(画像提供/マイナビ子育て)

――かねもとさんは6月27日に放送されるNHKの全国放送ラジオ番組「みんなの子育て☆深夜便」(23時~)、また24時から東北地方で放送される「よなきごやへようこそ」に出演されるとか。

かねもと「深夜便」では、番組アンカーの村上里和アナウンサー、仙台放送局の手嶌真吾アナウンサーなどと、「よなきごやへようこそ」では、手嶌アナや子育て中の俳優の三倉佳奈さん、助産師さんと、夜泣きの悩みについて語り合います。

手嶌アナもかつて夜泣きに悩んだ経験があって、子どもを連れて深夜に公園を歩き回った経験もあるそうで、リアル「よなきごや」のような方です。手嶌家をはじめ、みなさんのご家庭では夜泣き対策をどうしているのか、パパはどのようにかかわっているのか、ぜひ聞きたいです。

――番組のために、リスナーの夜泣きエピソードなども募集しているそうですね。

かねもと すでに子どもの夜泣きに1人で孤独に向き合った体験談が、そして子育ての先輩からは「いつか夜泣きは終わる」という励ましの声が届いています。送っていただいたエピソードもトークの中で紹介し、みなさんと共有したいと思っています。

――手嶌アナのように、ママと一緒に夜泣きに取り組んでくれるパパが増えている感触はありますか。

かねもと そうですね。「よなきごや」を描き始めた7年前と比べると、パパの育児参加が増えているように感じます。「よなきごや」7話では、第2子妊娠中の妻が入院したことで、初めてワンオペで仕事・家事・育児をこなすことになったパパを描きました。今なら「こういうことってうちでもあり得るかも」って共感してくれる人が多いのかなと思いますが、7年前だったら共感してくれる人のほうが少数派だったかもしれません。
とはいえ、パパの協力体制はまだまだたりないんじゃないかとも思います。

――子どもの夜泣きで疲れ果てているママに対して、パパはどうかかかわるのがいいと思われますか。

かねもと 家庭によってケースバイケースだと思うので、これが正解!というものはないですよね。ただ、寄せられる感想やコメントを読んで感じるのは、自分の気持ちを言いたくても言えないママがすごく多いということです。
声にならない妻の気持ちをくんで行動するスーパーダーリンが理想ではありますが、それを求めるのは酷なことだというのは、妻もわかっているはず。だから、「夜泣きにつき合うのは大変だよね。僕は何をすればいいのか教えて」って言ってほしいんです。
寝不足で疲れ果てている妻に「言わないとわからないのっ!!」ってキーッと返されるかもしれないけれど、そこはぐっとこらえて「ごめんね。言葉で伝えて」って言ってください。

週1回夜泣き対応を代わってほしい、夜は頑張るから日中に自由時間がほしい、限界だからベビーシッターを使いたいなど、ママがしてほしいことを聞いて、できる限りかなえてあげてほしいです。

――かねもとさんの夫さんは、かねもとさんが夜泣きで苦労していたとき、気持ちを聞いてくれましたか。

かねもと いえ!! 休みの日も1回も夜泣きの相手を変わってくれず、自分だけすやすやと別室で寝ていました。
夫は基本的には家族思いのいいパパですが、「女は産後の恨みは死ぬまで忘れない」。日本全国のパパにこれを覚えておいてほしいです。

お話/かねもとさん 画像提供/マイナビ子育て 取材協力/NHK 取材・文/東裕美、たまひよONLINE編集部

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多くのママ・パパを悩ませているわが子の夜泣き。まんが「よなきごや」を読むと、「自分だけじゃない」と思えてほっとできるかもしれません。
また、かねもとさんが出演する「みんなの子育て☆深夜便」と「よなきごやへようこそ」も、聞いてみてください。放送後の聴き逃し配信も行う予定とのことです。

みんなの子育て☆深夜便

よなきごやへようこそ

かねもとさん

PROFILE
東北在住の2児の母。著書にNHK総合テレビ「よるドラ」でドラマ化された『伝説のお母さん』のほか、『伝説のお母さん つづきから』『私の息子が異世界転生したっぽい』(以上、KADOKAWA)、原作担当書に『私の息子が異世界転生したっぽいフルver.』(小学館)など。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年6月の情報であり、現在と異なる場合があります。

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