「もうダメかと…」駅のホームで倒れ心筋梗塞…3日間意識不明 イギリス人男性を救った奇跡の救命リレー【静岡発】

静岡県にあるJR熱海駅のホームで、イギリス人観光客が突然意識を失って倒れた。男性は心筋梗塞で3日間意識を失ったものの一命を取り留めて後遺症もない。彼を救ったのは駅員・消防・病院による“奇跡の救命リレー”だった。

妻と熱海旅行の帰路に異変

ネクタイを締め、ジャケット姿で手紙を読む男性。

2024年4月、息子の結婚式に出席するためオーストラリアから日本を訪れたイギリス人、ピーズ・グラハム・ミッチェルさん(67)だ。

息子の結婚式を終え、妻・あき子さんと旅行で訪れた熱海市で突如として異変に襲われた。

グラハムさんは熱海から東京方面へ帰る途中、JR熱海駅の東海道線ホームで突然倒れ意識を失う。先にホームで電車を待っていたグラハムさんと合流するため、あき子さんは駅の階段を登り切ったところだった。

あき子さんは「(その時は夫の)そばにいなかった。10mくらい手前にいて、パッと見たら(夫が)ホームに倒れていた。最初はつまずいたのかなと思ったが、横に行ったらそういう感じではなかったので。もうダメだと思いました」と振り返る。

駅員を勇気づけた救急隊の言葉

突然の事態にホームは騒然となり、すぐに5人の駅員が駆け付けた。

駅員たちは手分けをして救急車の手配や心臓マッサージ、それにAEDを使って電気ショックを与え救命措置を施す。

当時、AEDを担当した駅員は、定期的に行っている救命訓練で救急隊から伝えられた言葉に突き動かされたという。

JR東日本 熱海駅・安田貴一 駅員:
(救命訓練で)一番心に残っていたのが「人を助けようとしてやった行為が間違っていたとしても、咎められないから是非やってください」と言われたのは心に留めていたので、とにかくもうできるだけのことはやろうと思ってやりました

駅員たちは7分間にわたって心臓マッサージを続け、その間3回ほどAEDを使った。

妻「もうダメかと思った」

病院に搬送されたグラハムさん。診断結果は心筋梗塞だった。その後も意識がない状態が続いた。

妻・あき子さんは「最初は本当に苦しそうだったので、可哀想というか、チューブだらけだったのでもう正直ダメかと思っていました」と、当時の心境を打ち明ける。

しかし3日後、グラハムさんは奇跡的に意識を取り戻した。

担当した医師は「駅員や救急隊の措置が適切だった」と説明する。

国際医療福祉大学熱海病院・石井一帆 医師:
(駅員の方が)非常に迅速に対応してくれたと伺っています。結果から言うと後遺症を残さずに蘇生できているわけなので、非常に質の高い救命措置をしていただいたと思う

対応した救急隊員もグラハムさんの意識が回復したことに胸をなでおろす。

熱海市消防本部・平野宗紀 救急隊員:
熱海駅の駅員による懸命な初期の対応、中継した救急隊による搬送、受け入れに協力していただいた医療機関、それぞれが適切な行動をとれたことによって迅速に救命のリレーがつながった結果だと考えている

グラハムさんが倒れた場所が偶然にも人目につきやすい駅のホームで、駅員たちが迅速にかけつけて救命措置を始めたため、心肺停止の状態が極めて短時間ですんだことが奇跡の回復につながったようだ。

「皆さん ありがとうございました」

その後、グラハムさんは会話もできるようになり、2024年6月時点は都内にあるあき子さんの実家でリハビリを続けている。

一命をとりとめたピーズ・グラハムさん:
幸運なことに駅員がすぐに駆け付けてくれて蘇生を始めて、病院に搬送されるまでの間 支えてくれました。間違いなく最初に私を生かしてくれたのは熱海駅のスタッフです

妻・あき子さん:
本当にありがとうございました。皆さんのおかげで命が助かりました。どうやって恩返ししたらいいかわかりませんが、これかもしっかり生きることで(恩返ししたい)。また、熱海に遊びに行きたい

駅員の迅速な対応と救急隊と医療機関の連携プレーで救われた1人の命。

命を救っただけでなく、熱海を訪れるリピーターを増やす結果となったようだ。

ピーズ・グラハム・ミッシェルさん:
皆さん、日本、ありがとうございました

(テレビ静岡)

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