上西琢也(監督) ‐ オムニバス映画『GEMNIBUS vol.1』より『ゴジラVSメガロ』僕が観たかった要素を詰め込みました

ちゃんと伝わるんだと感激しました

――上西琢也監督のゴジラ体験はどの作品になりますか。

上西琢也:いわゆる平成ゴジラと呼ばれている頃の90年代前半の作品を小学生のころに映画館で観ていました。 ――やはり、そうだったんですね。私も同世代なので、近いものを観ていたんじゃないかと感じていました。

上西:子供のころは批判や疑問なく作品全てを受け止めていました。なので、ゴジラは好き嫌いを越えてる感じがあります。 ――上西監督にとってのゴジラは原点となる作品の1つなんですね。

上西:そうですね。 ――『ゴジラVSメガロ』は10分ほどの短い作品ではありますが、印象的なシーンが沢山ある映画です。例えば避難シーンでは人々が怪獣に慣れていて、「また怪獣警報でたね。」くらいのノリで歩いて移動していたのがリアルだなと感じました。

上西:『ゴジラVSメガロ』と『ゴジラVSガイガンレクス』は繋がっているんです。メガロが現れるまでの期間にもゴジラが暴れまわり、慣れてしまったという設定があるんです。日本人は少しの地震では落ち着いているというのに近いですね。 ――そこが実際の人間心理に結びついていて、面白かったです。もちろんアクションシーンも見応えがありました。特にドロップキックをあれだけ格好よくリブートしていただけたのは嬉しかったです。観ていて「ありがとうございます。」となりました。

上西:そう言っていただけて嬉しいです(笑)。映画『ゴジラ対メガロ』(1973)で登場したドロップキックは絶対外せないなと思ったので、成り立たせるために手から熱線を出すシーンを入れました。 ――観ていてその方法があったかと、痺れました。メガロがドリルで突撃するシーンも格好良かったです。

上西:メガロならドリルはやらないといけないですから。 ――YouTubeでは海外の方からのコメント多く、それがキッカケで知ったのですがメガロは海外での人気が高い作品なんですね。

上西:レジェンダリーゴジラの影響もあると思いますが、映画『ゴジラ対メガロ』は海外のTVで何度も放送されていたみたいです。 ――YouTubeのコメントは読まれましたか。

上西:はい。リアルタイム世代の方も喜んでいただけて嬉しかったです。自分が込めた意図を汲み取ってくださったコメントもたくさんあり、ちゃんと伝わるんだと感激しました。 ――それだけ、気持ちの込められた作品ですから。前作『ゴジラVSガイガンレクス』もそうですがあんなに凄いものを無料で公開してはダメだと思います。ちゃんとお金を取らないと。

上西:ありがとうございます(笑)。まずは知っていただかないとという部分もあります。

ゴジラには逆境に立ってもらいました

――メガロは海外ファンも多いということですが、そこを意識した部分はありましたか。

上西:海外の方も格好いいと思っていただけるよう、メガロのデザインには気を配りました。 ――デザインが格好良いシーンだけでなく、角をもがれたりダメージ表現も素晴らしかったです。

上西:角があるともぎたくなりますから。VS作品は欠損や破壊が意外とあるんです。僕はあの死闘感が好きで、目に見えたダメージ表現をやりたくなってしまいました。 ――ゴジラならではの様式美が沢山あるシリーズだと思っています。例えば、空を仰いでの咆哮・放射熱線・音楽でも素晴らしいメインテーマがあります。今回のように短い作品では上西監督がやりたいことと様式美を上手く組み合わせるのは大変ではなかったですか。

上西:大変ではなかったです。近年のゴジラもいい作品ばかりですが自分が観たいゴジラの要素が入っていなかったりするので、僕が観たかった要素を詰め込みました。大きな部分で言うと怪獣バトルがそうです。 ――自分の中にあるゴジラ像をだす作業と、過去作をリスペクトして活かす部分のバランスはどのように取られたのですか。

上西:メガロのデザインをするときもそうですが、まずは73年『ゴジラ対メガロ』だと認識できる要素を入れるように意識しています。シートピア海底王国のシーンもそうですし、メガロが地面からでてくるシーン、手のドリルといった技などがそうです。特にメガロというキャラクターを変えないに気を付けました。別怪獣にしてしまうとそれは別怪獣にすればいいのではとなりますから。 ――今作でこれが出来て良かったなと思う部分はありますか。

上西:新しい技を出せたことです。実は、放射熱線をどこから出せてもいいんじゃないかとは思っていたんです。前作『ゴジラVSガイガンレクス』でかなり暴れたので、そのままインフレしていくのは違うなと思っていました。なので今作ではまだダメージが残っていて、ガイガンレクスの時より弱っているという設定になっています。よく観ていただくわかりますが熱線が途切れていて、疲労から放射熱線が出せなくなっているという状況なんです。今回は殴り合いをしてほしかったので、ゴジラには逆境に立ってもらいました。 ――その選択は正解だと思います。放射熱線も良いですが、それだけでは空中戦で終わってしまいメガロの良さが無くなってしまいますから。

上西:そうですね。

本来の形でしっかりと味わっていただけるのが楽しみです

――ずっとクライマックスなので、短い作品とはいえ制作するのは疲れそうですが如何でしたか。

上西:技術的には普通の映画1本撮るくらいの段取りを全てやっていますから、10分作品と考えると大変だったかもしれませんね。 ――やはり、カロリー高めだったんですね。構成の技術はどのように経験を積まれたのですか。

上西:ジブリなどの色々な作品のメイキングを観て、あとは一緒に仕事させていただいた監督のみなさんとのやり取りから勉強させていただきました。 ――上西監督は『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』にも参加されていますが、庵野秀明監督から影響を受けたものもあったのでしょうか。

上西:そうですね。庵野監督も子供のころに観た『帰ってきたウルトラマン』の影響が『シン・ウルトラマン』にあるということですが、その気持ちは凄く分かります。僕の場合はそれがゴジラになります。小さいときに影響を受けったものを自分が作り直すとなったときのお手本として庵野監督とお仕事させていただいた時に勉強させていただいたものを今作の制作に生かしています。 ――今回、劇場で公開されるということで5.1chになりますが、音は撮り直されたのですか。

上西:最初から音を5.1chになっていて、劇場作品想定して制作していました。今回は想定通りの音と映像をみなさんに観ていただける形になります。音楽の面で言うとメガロが出てきたときの音楽はオリジナルの『無敵のメガロ』という曲をアレンジさせてもらっています。それを本来の形でしっかりと味わっていただけるのが楽しみです。『ゴジラVSメガロ』は怪獣アクションがメインなので、映画『GEMNIBUS vol.1』の中でも劇場で観る価値がより強い映画だと思います。 ――そうですね。ゴジラはスクリーンで観るのが特に楽しいですから。

上西:はい。ぜひ、劇場で観ていただきたいです。 ――完成した作品をスクリーンでご覧になりましたか。

上西:はい。やっぱり怪獣映画は劇場で観た方がいいなと改めて感じました。 ――そうですね。今は海外の方も来られるようになっているので、熱いファンは日本に来て観たいという方もいらっしゃると思います。

上西:この映画は言葉が分からなくても観られる作品なので、日本だけでなくいろいろな国の方にもスクリーンでも観てほしいです。ちょっとした小ネタで言うと、シートピアの女の子が手に持っているペンダントの中にある何かは『ゴジラ対メガロ』のシートピア海底王国人と同じ服装をアレンジしたシンボルになっています。そういう小ネタが一杯あるので、劇場の大きなスクリーンで探してもらえると嬉しいです。

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