川崎市制100周年事業、29日にブルーインパルス飛行 市民団体は警鐘「市民は危機感がない」

ブルーインパルスの危険性を訴えるチラシを手にする「沖縄の映画を観よう!かわさき」の代表の斎藤彰さん(右)と、野副達司さん

 29日に等々力緑地(川崎市中原区)一帯で行われる、市制100周年記念事業「かわさき飛躍祭」で飛行する航空自衛隊の「ブルーインパルス」へ懸念の声が上がっている。市民団体「沖縄の映画を観よう!かわさき」の代表、斎藤彰さん(75)は「ブルーインパルスはもともと軍事訓練のための練習機だ。市民は危機感がない」と警鐘を鳴らす。

 ブルーインパルスは、航空自衛隊の広報活動の一環で曲芸飛行を行っている。飛躍祭の当日には6機が大空で展開したり、スモークを出して飛んだりする。地上の観客は、躍動感あふれる飛行を見ることができる。

 JR川崎駅東口駅前広場で「ブルーインパルスの飛行についてどう思うか」と尋ねると、「楽しみにしている」「写真を撮りたい」などと期待の声が大半だった。

 懸念を抱く斎藤さんは「僕たちの団体が少数派だということは分かっている」と話す。それでもブルーインパルスの危険性を訴え続けている理由は、飛行が安全とは言い切れないこと、飛び交うのが軍事訓練のための練習機であることを多くの人に知ってもらいたいからだ。

 「戦争の歴史を受け継ぐ人が減っている。祭りのために軍事練習機が住宅地の上空を飛ぶことは、当たり前ではない」と語気を強める。

 これまでもブルーインパルスは事故を起こしてきた。1982年には、浜松基地(静岡県浜松市)の航空祭で、下向き空中開花を行っていたブルーインパルス1機が急に高度を下げ墜落し、パイロット1人が死亡、近隣住民10人以上が重軽傷を負った。2014年1月には、松島基地(宮城県東松島市)所属のブルーインパルスが空中で接触して緊急着陸したこともある。

 川崎市は1982年6月に「核兵器の廃絶と軍縮を求め(中略)核兵器廃絶平和都市になる」と宣言している。斎藤さんは「川崎の百年の歴史をさかのぼれば空襲を受けた過去もある。犠牲になった人がいることを忘れないでほしい」と思いを込める。

 斎藤さんたちの市民団体は4月26日に福田紀彦市長へ「ブルーインパルス飛行に関する抗議・質問」を提出し、文書での回答を求めた。しかし5月17日に「市として回答はできません」と担当者から電話で連絡があったという。

 5月7日に行われた福田市長の定例会見で、ブルーインパルスの飛行中止を求める声が上がっていることを問われた市長は、「撤回の考えは全くない」と強調し、「飛ぶこと自体にリスクが迫っているという考えはものすごく変な論理だ」と答えた。 

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