【核燃料の冷却停止】再発防止策の徹底を(6月27日)

 核燃料の冷却は廃炉を安全、円滑に進める上で極めて重要だ。東京電力福島第1原発6号機の使用済み核燃料プールに冷却水を流せなくなった問題は、大事に至らなかったにせよ、安全管理態勢が問われてしかるべきトラブルと言える。原因の早期究明とともに再発防止対策を徹底する必要がある。

 東電によると、18日午前8時35分ごろ、プールの水位計など計器類が停電で止まり、冷却水を送るポンプも自動停止した。計器に電気を送る設備を焼損する火災が発生したためとされる。非常用ディーゼル発電機を使い、10時間後にポンプを再起動させた。

 過剰な電気が設備に流れたのが火災の原因としているが、そうした状況を招いた経緯は分かっていない。現場からは長さ約40センチの細長い金属片が見つかっている。設備を構成する部品の一部なのか、外部から紛れ込んだのかを調べているが、火災を引き起こした可能性もあり、詳細に調査すべきだ。

 損傷した設備の点検は6年に1度の頻度で実施していた。直近では2022(令和4)年に確認したが、漏電など異常はなかったという。原発の施設は老朽化が進んでいる。火災の再発防止に向けては、設備の品質維持や点検の在り方などを再検討すべきではないか。

 冷却停止による安全面への影響について、東電は「問題ない」と繰り返した。プールの水温は10時間で22.0度から1.5度上昇したが、安全管理上の制限値である65度までには余裕があったためとしている。ただ、トラブルで冷却水を流せない不具合を招いた事実は軽視できない。「安全上、重要な事案であるとは理解していない」との山中伸介原子力規制委員長の発言にも違和感を拭えない。

 東電は、続発するトラブルを受けて福島第1原発の全作業約千件を総点検した際、「大丈夫なはずだ」との思い込みが作業ミスを誘発している現状を問題視した。今回の事態に当てはめると、水温に異常が見られなくても「本当に大丈夫なのか」との緊張感を持ち続ける姿勢が大切だろう。

 原発事故で得た教訓と危機意識を風化させてはならない。東電と規制委は想定外にも対応できる心構えが改めて求められる。(角田守良)

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