価値ある住宅を後世に残す 100年先も住み継げる体制づくりを

(一社)住宅遺産トラストは、歴史的、文化的に価値がある住宅を「住宅遺産」と呼び、その保存・継承活動を行っている。日本は中古住宅の流通体制が成熟しておらず、貴重な「住宅遺産」が相続や老朽化などをきっかけに消失してしまうケースが後を絶たない。住宅遺産トラストではこうした「住宅遺産」を保存・継承するための仕組みづくりを目指している。これまでの実績や活動に対する思いなどについて、木下壽子理事に聞いた。

(一社)住宅遺産トラスト理事 木下壽子 氏

―活動内容について教えてください。

私たちは、歴史的、文化的に貴重な住宅を「住宅遺産」と呼び、関東地方を中心にその保存・継承活動をしている一般社団法人です。建築物の保存活用に関わる個人や団体、建築家、不動産鑑定士のほか、建築関連の法人などが在籍しており、2024年6月現在、会員数は100名を超えています。会員や外部の専門家から「住宅遺産」の、保存・継承へのアイデアやサポートをいただきながら活動に努めています。

歴史的建造物を保護する国の制度に登録有形文化財制度があります。しかし、文化財に指定されれば、建物の保存が求められ、修復の際などに一部補助金が出ますが、残りの費用については所有者の負担となります。自治体などが保有する公共建築であれば住民の合意を得ることで税金を使って耐震改修などができますが、個人所有の住宅の場合はそうもいきません。加えて、住宅の保存・活用について具体的な手法を相談する先もほとんどない。どんなに優れた建築であっても、個人の所有物であるという点で住宅の継承はきわめて難しいテーマです。優れた住宅を失うことは、貴重な技術や空間といった建築文化を失うだけでなく、そこで育まれてきた住まい方や地域の記憶景観を失うことにもつながります。

住宅遺産トラストは、こうした優れた住宅である「住宅遺産」を残したいという所有者のための常設的な相談窓口という位置づけです。

「住宅遺産」について明確な定義は定めていませんが、次世代に引き継ぐべき価値ある住宅です。ヴィンテージマンションというものがありますが、築年数を重ねても建物自体に価値を見出せるという意味ではこれに近いかもしれません。日本の建築文化は世界でも評価が高く、有名建築家が建てた昭和時代の名作住宅などは「新築にはない”味”や”豊かさ”が感じられる」として若い世代を中心に関心を集めています。


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