中国・チチハル市で牛肉・酪農産業盛ん

中国・チチハル市で牛肉・酪農産業盛ん

甘南県にある家畜市場「歓喜牲畜交易市場」で、取引のため柵に入れられる牛の群れ。(5月22日撮影、ハルビン=新華社記者/蔡湘鑫)

 【新華社ハルビン6月27日】中国黒竜江省チチハル市の甘南県にある家畜市場「歓喜牲畜交易市場」には、毎週月、水、金曜日の朝8時半になると、ダムの水門が開いたかのように、中国各地からやって来た畜産農家や家畜商がなだれ込む。

 「8時半に入場して40分足らずで牛1頭が売れた。6800元(1元=約22円)になった」と語るのは牛農家の高成(こう・せい)さん。30頭近くを飼育し、農場からも近いこの市場で売って、年間10万元以上の利益を上げている。

中国・チチハル市で牛肉・酪農産業盛ん

甘南県にある家畜市場「歓喜牲畜交易市場」で買った子牛をトラックに運ぶ客。(5月22日撮影、ハルビン=新華社記者/蔡湘鑫)

 チチハル市は、世界三大黒土地帯の一つである松嫩(しょうのん)平原の奥地に位置し、トウモロコシの産地、畜産・酪農地帯として世界的に知られる。「チチハル」は、黒竜江省に住む少数民族のダウール族の言葉で「天然の牧場」を意味する。北緯47度線が貫き、北海道や米ウィスコンシン州、カナダ・アルバータ州など世界的な酪農地域とほぼ同じ緯度帯にある。

 市農業農村局の統計によると、昨年の肉牛の飼育頭数は204万7千頭で、産業全体の生産額は117億元に上った。

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甘南県にある家畜市場「歓喜牲畜交易市場」。(5月22日、ドローンから、ハルビン=新華社記者/張濤)

 同市竜江県で畜産や食肉加工を手がける竜江元盛和牛産業は2012年、オーストラリアやニュージーランドから優良な種雄牛136頭を導入した。蔡承達(さい・しょうたつ)副総経理によると、12年の繁殖を経て、純和牛の飼育頭数は8500頭に増えた。凍結精液の提供を通じ、15万頭以上の改良和牛の生産にも寄与している。

 同社は牛肉製品を国内外に販売し、牧場から食卓までの「竜江和牛」ブランドの産業チェーンを形成している。派生商品の開発も盛んに進めており、「血清タンパク関連の製品開発では将来的に、スキンケアや化粧品、バイオ医薬品、健康食品などの分野への応用を計画している」(蔡氏)という。

中国・チチハル市で牛肉・酪農産業盛ん

チチハル市竜江県にある竜江元盛和牛産業の牛舎。(ハルビン=新華社配信)

 チチハル市は、乳幼児用乳製品の原料となる生乳の一大産地でもある。夏と冬で気温差が70度以上あり、夏の日照時間は最長17時間に及び、冬は土壌凍結期間が6~7カ月続く。休眠期間が長いため作物が育つのに必要な養分が十分に蓄えられ、乳牛の飼料となる良質な牧草がよく育つ。

 甘南県にある瑞信達牧場では、乳牛の成長段階に合わせ、専門の栄養士が配合飼料を用意している。孟明明(もう・めいめい)牧場長によると、乳牛1日1頭当たりの飼料費は約140元。栄養価が高く新鮮な飼料を与えるため、サイレージ(サイロで乳酸発酵させた飼料)を運搬車に積み込んでから牧場に運び入れるまで6時間を超えないようにしているという。

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19日、チチハル市の焼肉店で食事をする客。(ハルビン=新華社記者/丁赫)

 同市発祥の大手粉ミルクメーカー中国飛鶴は06年以来、4万ヘクタールの専用農場、11カ所の自社牧場、乳牛9万頭余りを擁する原料乳の生産拠点を築いてきた。生乳の鮮度を確保するため、搾乳からわずか2時間で加工工場に運ぶ体制を構築。生乳の成分抽出に当たっては、スマート温度管理やクロマトグラフィーなど六つの画期的な技術を用い、粉ミルク中の活性型栄養素の維持を最大限に図った。

 チチハル市では焼肉関連の産業も盛んで、人口約400万人のうち約40万人が牧場や加工工場、焼肉店、電子商取引(EC)などの関連産業に従事している。

 ハラール肉の加工などを手がける斉函楊佳清真肉業の工場では、数十人の従業員が生産ラインで整然と作業をこなしていた。ベルトコンベアの終点では、北京、上海、広州など全国各地の宛先が貼られ、名物のチチハル焼肉が入った紙箱が、5秒に1箱のペースで出てくる。年間売上高は約2億元に上る。

 「良質な牛乳があれば良質な牛肉もある」。同社の楊寧(よう・ねい)総経理によると、同社は牧場を「引退した」乳牛から適切な肉牛を選んで肥育し、7~8カ月かけてチチハル焼肉用の良質な原料にしている。(記者/張玥)

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チチハル市の焼肉店で客が焼いた肉。(2023年6月19日撮影、ハルビン=新華社記者/張玥)

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