大熊に共助の心芽生え、復興拠点避難解除2年 住民新たな交流

大熊町の復興拠点で新たなコミュニティーをつくろうと意見を交わす住民たち=22日、大熊町・大野南住宅エリア

 東京電力福島第1原発事故で大熊町下野上地区の特定復興再生拠点区域(復興拠点)に出された避難指示が解除されてから、30日で丸2年となる。JR大野駅周辺にあり、東日本大震災前まで中心街だった下野上地区は、この数年で建物の解体が進む。かつての風景が消える中、町の再開発事業で新たなまちへと生まれ変わろうとしている。

 町によると、復興拠点の現在の居住者数は300人弱。このうち4月に入居が始まった大野南、原の両住宅エリアには計46世帯72人が暮らす。帰還者と移住者が入り交じる地域で住民主導による新たなコミュニティーが形成されつつある。「初めまして」の言葉が飛び交っていた家並みに、共助の心が芽生え始めた。

 両住宅エリアでは、おおくままちづくり公社の復興支援員の手ほどきを受け、交流イベント「うっちゃこ!」が定期的に開催されている。名称には助け合いの言葉を表す「うちに来なよ」との意味が込められた。

 3回目が22日に開かれ、入居者が意見を交わした結果、7月下旬に両住宅エリアで飲食イベントの開催が決まった。大野南住宅エリアでは、ラジオ体操に続き朝のコーヒーを楽しむ。協力する秋田県出身の移住者でコーヒー焙煎(ばいせん)士の深沢諒さん(27)は「コーヒーが交流のツール(手段)となって人々がつながっていけばうれしい」と笑顔を見せる。

 原住宅エリアでは、夏らしい企画として住民が流しそうめんをする予定だ。神奈川県から移住したイベントリーダーの片野弥真志(みまし)さん(56)は「家から一歩踏み出して交流を深められるような機会にしたい」と話す。

 両住宅エリア周辺には住宅分譲地の整備が計画されており、新たな住民の受け入れ準備が進む。13年ぶりに帰還し、大野南住宅エリアに住む今野盛雄さん(71)は「大野駅前にはこれから居住者が増えてくる。二つの住宅エリアが中心となってコミュニティーの基盤をつくることが大事だ」と語った。(渡辺晃平)

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