【韓国ドラマ】「国民のオンマ」と呼ばれる日も近い!?Netflix話題作『Missナイト & Missデイ』昼の50代ヒロイン役で注目、イ・ジョンウンはどんな女優?〈後編〉

筆者のオンマ(光州在住)の手料理

Netflix話題作『Missナイト&Missデイ』は、ひょんなことから20代と50代を、夜と昼で行ったり来たりすることになってしまった就活生の物語。夜の20代ヒロイン、イ・ミジン役には、『応答せよ1997』のチョン・ウンジ(A pink)が扮している。

いっぽう、昼間に50代に変身してイム・スンとして生きるヒロインを熱演しているのが演技派女優イ・ジョンウンだ。外見は50代のアジュンマ(おばさん)でも中身は20代のイム・スンは、新しい職場でも万能なシニアインターンとして大活躍。自転車を意気揚々と漕ぐ元気な姿は、毎回じつに愉快で爽快だ。

イ・ジョンウンは、イ・ビョンホン、ファン・ジョンミン、リュ・スンリョン、ユ・ヘジン、チャ・スンウォン、ユン・ジェムン、キム・サンホ、カン・ホドン、キム・ヘスなど多くのスターを輩出した1970年生まれ。

舞台デビューが1991年で、映画40作以上、ドラマ60作以上に出演しているが、一般に知られるようになったのはこの7、8年だろう。同い年のスターたちと比べるとかなりの遅咲きだが、今や映画やドラマで主役クラスとなった。

ここでは、ポスト “国民オンマ” (オンマ=母)の呼び声も高い、イ・ジョンウンの演技の魅力が味わえる出演作を紹介しよう。(記事全2回のうち後編)

■離島のおおらかなアジュマを演じた『茲山魚譜 チャサンオボ』

朝鮮王朝時代、政争に巻き込まれて島流しになった学者チョン・ヤクチョン(ソル・ギョング)の身の回りの世話をする女性に扮した。

イ・ジョンウン本人はソウル出身なのだが、各地の方言を再現する能力の高さも含め、田舎のおかみさん役がじつに上手く、本作ではインテリとの対比で光るおおらかな島の女性をナチュラルに演じていた。

『茲山魚譜 チャサンオボ』の舞台、全羅南道の離島、黒山島

■光州の料理上手な妻を演じた『タクシー運転手 約束は海を越えて』

ソウルからタクシーを運転してはるばる光州にやってきたマンソプ(ソン・ガンホ)と青い目の記者を自宅に招くテスル(ユ・ヘジン)。イ・ジョンウンは突然の来客にとまどう妻を演じた。

「大事なお客さんなのに、これしかおかずがないのか?」と無茶を言うテスルを睨む妻。

食材が豊かで、料理上手が多いといわれる光州。お膳には、牛肉らしきものの煮物、テンジャンチゲ、南道名物の芥子菜キムチ、サワガニの醤油漬け、どんぐりの澱粉を固めたもの、蓮根の煮物、豆モヤシやホウレン草のナムル、大根の干し葉のスープに山盛りのごはんが載っている。

ソウルから来た者や外国人は「どこが『これしか』なの?」と思っただろう。夫を睨む一瞬の目の演技で、イ・ジョンウンが全国の妻を味方につけた瞬間である。

■儲け話に目の色を変える団地の主婦を演じた『弁護人』

イ・ジョンウン扮するアパート住まいの主婦は、自宅で友人と談笑しているとき、突然やってきた不動産専門弁護士(ソン・ガンホ)を最初はいぶかしんでいた。しかし、手土産のパイナップルで警戒心を解き、弁護士がこの家を高値で買いたいと言い出すと態度が一変。友人を帰してしまう。

「ジュースでもいかが?」と猫なで声で言うが、弁護士に「化粧の続きをなさったら?」と言われて慌てふためく。儲け話に目がくらみ、片方の目しかメークしていなかったことも忘れていたのだ。

実利優先の釜山アジュマらしい演技は説得力抜群だった。こんな対応は標準語だとちょっと嫌味だが、愛嬌のある釜山弁、しかも片目だけメークしたイ・ジョンウンなので笑ってしまう。

■葬儀会場の修羅場シーンで存在感を放った『母なる証明』

筆者がイ・ジョンウンを初めて認識した作品だ。のちに『私たちのブルース』で共演するキム・ヘジャ扮する容疑者(ウォンビン)の母が被害者の葬儀会場にやってきて、「息子は殺していません」と言う。イ・ジョンウンはそれを迎える親戚という難役に挑んだ。

葬儀会場という抑えた演技が要求される状況設定。相手は凄まじい目力の大ベテラン女優。考えただけでも胃が痛くなる修羅場の演技を、彼女は怒りを通り越してあきれたような笑顔と、胸倉をつかんで会場から押し出そうとする力技でみごとに演じ切った。

ちなみに、この修羅場を平手打ちひとつで治めた、くわえタバコの妊婦役は、『涙の女王』でキム・スヒョン扮する主人公ヒョヌのオンマを演じたファン・ヨンヒである。

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