伝統行事「高橋の虫送り」を次世代に 福島県会津美里町尾岐地区 保存会解散で新団体発足

花で装飾された虫籠を川に落とす地区住民

 福島県会津美里町尾岐(おまた)地区の伝統行事「高橋の虫送り」を継承する新団体「高橋の虫送りをつなぐ会」が今月、発足した。高齢化などを背景に、これまで活動してきた保存会が4月に解散したのを受け、貴重な行事を次世代につなごうと有志が立ち上がった。

 高橋の虫送りは、稲や農作物を害虫から守り豊作を祈願する伝統行事。毎年土用入りの前日の7月19日、大きな虫籠(かご)に虫を入れて川に流す。1966(昭和41)年に町指定重要無形民俗文化財に指定され、今年で56回目を数える。

 行事の要である巨大な虫籠の製作者の高齢化と後継者不足、地域の少子化、農薬の普及といった農業形態の変化などが重なり、継続が難しくなっていた。地域文化の灯を消すまいと地区内外の有志21人が集まり、新たな運営組織を設立した。力になりたいと20代の若者も加わった。

 今年は虫籠流しは行わず、技術継承のため虫籠の製作工程を記録したり、地元の宮川小の児童と一緒に虫籠を作る。完成後は地区の龍門寺での集いを経て、町郷土資料館さとりあで7月21日から8月3日まで虫籠を特別展示する。

 代表の片山紀彦さんは「虫送りは、自然を大切にして共に生きてきた先人の感覚を思い起こさせてくれる貴重な行事だ。少子高齢化や過疎化が進む中、地域コミュニティーの維持継承にもつなげてたい」と思いを語った。

(会津版)

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