新紙幣が生活に直撃?値上げや会員ポイントが引き継げない店も… 「旧紙幣は使えない」詐欺にも注意

20年ぶりの新紙幣発行に向け券売機の更新などの準備が進むが、店によっては私たちの生活に影響が出るケースもありそうだ。新紙幣対応の費用を理由に値上げをしたり、新紙幣用に発行する会員カードが旧カードのポイントを引き継げない店があったりするからだ。警察も新紙幣を悪用した詐欺に注意を呼び掛ける。

偽造防止に世界初の技術

2024年7月3日から発行が始まる新紙幣。

1万円札は近代日本経済の父・渋沢栄一、5000円札は女性の地位向上に尽力した津田梅子、1000円札は近代日本医学の発展に貢献した北里柴三郎となり、20年ぶりにデザインが変わる。

新紙幣には偽造を防止するため世界初の「3Dホログラム」という技術を採用。

この新紙幣の発行を前に対応に追われている業界がある。

券売機の販売業者は大忙し

2024年6月。券売機の販売やレンタルを行う会社では新紙幣に対応した券売機を納品するため、連日急ピッチで作業が進められていた。

入荷した券売機を顧客の要望にあった設定に変えるためで、券売機は1台100万円から300万円ほどだという。

倉庫では券売機の「紙幣識別装置」と呼ばれるユニットを、1台1台手作業で交換していた。

交換を終えた券売機には「新紙幣対応」のステッカーが貼られる。

たくさんの注文が寄せられているもののメーカーの生産が追い付いついておらず、通常1カ月で納品できるものが最も長い場合で半年ほど遅れているという。

券売機の販売などを手掛けるトラスト・山本伊織 社長は「なかなか思うように入荷されないので、お待ちいただく時間が長くなってしまい、お客様に不便をおかけしているので大変心苦しい」と話す。

自動販売機やATMの製造メーカーなどで作る日本自動販売システム機械工業会によると、新紙幣への対応はATMや鉄道の券売機では8~9割程度、コインパーキングなどの自動精算機や券売機は5割程度、自動販売機は2~3割程度が新紙幣の発行までに対応を完了できると見込んでいるという。

会員カードのポイントが引き継げない

静岡市清水区にある入浴施設「あおい温泉 草薙の湯」では、入浴券やタオルなどを販売するための券売機5台を約20年前に購入した。今の機種はアナログ式だが、全て液晶のタッチパネル式に変更する。

入浴施設では1年ほど前からメーカー側と調整を重ねていて、6月中に電子決済に対応した新しい券売機に交換できるそうだが、新たな課題も見つかった。

これまで入浴や食事の際に貯めていたポイントが新しい券売機に対応した会員カードに引き継げないことがわかったのだ。

このため、施設では6月10日までのポイントの引換を呼びかけていた。

あおい温泉 草薙の湯・木村豊明マネージャーは「とても歯がゆい部分は正直あります。今まで長い間ご愛顧いただきましたので、それが次のサービスに引き継げないとなると、お客様に長い間使っていただいたサービスがなくなってしまうということなので、とても申し訳ない気持ちです」と話す。

費用増加で苦渋の値上げも

券売機を交換するにあたり困惑する声はほかにもある。

大きな炙りチャーシューが乗った「魚介豚骨ラーメン」が一番人気のラーメン店「まるさ商店」。このラーメン店でも券売機は欠かせないが、新しい券売機を購入するのではなく新紙幣に対応したユニットに付け替える予定だという。

今の券売機は60万円ほどで購入した中古品だが、電子マネー対応の新機種に買い替えると200万円以上かかるそうだ。対応ユニットの付け替えでも50万円ほどかかり、「食材や光熱費の高騰と重なり大きな痛手」と嘆く。

まるさ商店・佐藤健二 店長は「(物価高騰に)追い打ちをかけての新札の交換で出費が痛い。それに合わせて値上げを検討していて、お客様には迷惑をおかけすると思いますけど、そういう形で対応していきたい」と苦しい台所事情を打ち明ける。

「旧紙幣は使えない」は詐欺

私たちの生活に大きな影響を及ぼす新紙幣の発行だが、こうしたタイミングに乗じた詐欺被害も心配されている。

静岡県警によると、財務省の職員や銀行員になりすまし「新紙幣導入に伴って古い紙幣が使えなくなるから回収する必要がある」「古いキャッシュカードだと新紙幣に対応できなくなるので、新しいキャッシュカードに変えなければならない」などの手口の詐欺が予想されるという。

静岡県内でこれまでに新紙幣をめぐっての詐欺被害や不審な電話は確認されていないが注意が必要だ。

静岡県警生活安全企画課・増田修 次席:
新紙幣に変更されたからといって古い紙幣が使えなくなることはないので、電話で紙幣やお金といったキーワードが出てきたら、まず詐欺を疑ってほしい

20年ぶりの新紙幣の発行に向けて着々と準備が進められる中、こうした機会を悪用した詐欺の手口にだまされないよう警戒も必要だろう。

(テレビ静岡)

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