「息子を思う気持ちは変わらない」出張中の家族を襲った凶行…癒えぬ心の傷 松本サリン事件から30年=静岡・掛川市

オウム真理教による松本サリン事件から2024年6月27日で30年です。当時23歳の息子を失った掛川市に住む女性は、変わらない悲痛な思いを語りました。

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「松本サリン事件」から30年。現場には献花台が設けられています。

<元上司が犠牲になった女性>
「ようやく30年たって現場に来られたかな。言葉にならず、ただただ手を合わせるだけでした」

1994年6月27日深夜、松本市の住宅地でオウム真理教が猛毒のサリンを噴霧し8人が死亡、重軽症者はおよそ600人にのぼりました。

掛川市に住む小林房枝さん(82)。松本サリン事件で息子の豊さんを失いました。

<小林房枝さん>
「やはり息子のことを思う気持ちは当時と全く変わっていませんから、6月になるとうつ状態になったり、その日が近づいてくると、(生きていたら)今頃はどうしていただろうかという気持ちがすごく強くなりまして、その繰り返しで30年迎えていますね」

豊さんは当時23歳、松本市へ長期出張中でした。

事件から15年。小林さんは松本の事件現場を訪れていました。悩んだ末、現場に立ちました。

<小林房枝さん>
「息子がここで1か月暮らしたその同じ空気を吸っているかなという…やはりここで息子が倒れたなというのは実感しています」

小林さんにとって松本サリン事件とはー。

<小林房枝さん>
「息子をなくしたことでとにかく絶望感が覆っていた。あるとき主人と海にって死に場所を探していたような気がする。海ならいつでも死ねるという思い。それから少しずつ今日に至り。松本サリンというのは私にとって死ぬまで心に重くのしかかっているものです」

事件から30年。小林さんが今も大切にしているのは当時豊さんが使っていた万年筆です。

<小林房枝さん>
「やっぱりあの子の手のぬくもりが残って…あの子も触っていたんだなっていうのはありますね」

一連の凶悪事件を引き起こしたオウム真理教をめぐっては現在も「アレフ」などの後継団体が活動を続けています。

<小林房枝さん>
「ただ解散してほしい。なくなってほしい。今あることが理解できないです」

Q. 事件のことを忘れないでほしいという思いは?
「それはありますね、事件もそうですが、オウムがどういう団体だったかはちゃんと知ってほしい」

社会を震撼させた凶行から30年。遺族の傷が癒えることはありません。

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