【6月28日付社説】台湾からの誘客/体験型の充実で魅力高めよ

 県内に宿泊する外国人のうち、約半数は台湾から訪れている。多様化するニーズに応えられる環境を整えていくことが重要だ。

 県が主に台湾からのインバウンド(訪日客)の誘致促進に向け、受け入れ態勢と情報発信の強化に乗り出す。体験型観光などの旅行商品をつくる事業者に対し、観光アドバイザーなどの専門家を派遣するほか、台北市内で県内観光地の映像を流す取り組みを始める。

 台湾の航空会社タイガーエア台湾が今年1月から、福島空港と台湾を結ぶ定期チャーター便を運航している。運航を機に旅行者は増えているものの、80%ほどで推移している搭乗率の向上が課題だ。特に夏場は観光客が減る傾向にあり、10月末以降のチャーター便の継続運航に向け正念場といえる。

 最近の訪日客はリピーターが増えており、主要な観光地を巡るだけでなく、サイクリングや登山、農業体験などにも関心が集まっている。こうした観光資源に恵まれた本県にとっては好機だ。これから台湾でも評価が高いモモの収穫が本格化する。収穫体験やデザートづくりなどの旅行商品を充実させ、誘客につなげたい。

 新型コロナウイルス禍の収束と記録的な円安を追い風に、買い物を目的とした旅行者が急増している。観光庁によると、訪日客の消費額の内訳は、最多の宿泊費に次いで買い物代・飲食費が全体の5割を占めている。今年1~3月の調査では、台湾の旅行者の消費額は宿泊費より買い物代が多かった。

 県は昨年9月時点で286店舗ある県内の免税店を数年かけて500店舗まで増やしたい意向だ。現在はドラッグストアや家電量販店などが中心のため、本県の貴重な観光資源となっている日本酒や工芸品の小売店などにも参画を呼びかけるという。

 免税対応を始めるには、店内の外国語表記や手続き用の電子システムの導入などが必要で、家族経営の店舗などには負担となっている。地場産品の振興や誘客効果を地域全体に広げるため、県や商工団体などは、こうした小規模店舗へのノウハウの提供、設備投資の支援などを検討してほしい。

 日本人の国内旅行が減少傾向にある中、各自治体が訪日客の誘客に力を入れている。特に台湾は多くの地方空港で直行便があり、宮城や新潟、茨城などの隣県には同じタイガーエア台湾が就航している。県境をまたいで広域的な観光を楽しみたい人は多いだろう。隣県などと連携し、県外の観光資源も取り込んだ旅行商品をつくり、PRしていきたい。

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