旅日記の挿入曲(6月28日)

 民間航空会社による国内旅客定期便の運航は95年前の1929(昭和4)年夏、東京―大阪―福岡間で本格的に始まった。太平洋戦争で中断し、終戦から6年後に再開された。今は約90空港間に空路が網の目のように広がり、身近で便利な乗り物になった▼福島空港発着便の昨年度の搭乗者は22万9520人を数え、新型コロナ禍前の2019年度の約9割まで戻っている。台湾との定期チャーター便も飛び始めた。暦が変われば夏の行楽期。さらなる利用回復への視界は良好といきたいところだ▼「ボーディング・ミュージックを聴くと、わくわくする」と声を弾ませる人もいるだろう。搭乗時や着陸後に流れる音楽が旅の高揚感を誘う。航空会社ごとに異なり、福島空港に就航する全日空は悠々とした「アナザー・スカイ」をかける。バイオリニストの葉加瀬太郎さんが作曲した▼各社とも琴線に触れる選曲に工夫を凝らす。旅路を急ぐあまり気付かぬ乗客は案外多いのかもしれない。空の旅を盛り上げる音色を聞き逃すのは惜しい。旅日記の挿入曲として旅情を演出するのは楽しい。扉絵は、定期便が離陸したあの頃と変わらぬ夏色の空。梅雨明けが早くも待ち遠しい。<2024.6・28>

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