【国スポ改革】柔軟な発想で議論を(6月28日)

 国民スポーツ大会(国スポ=旧国民体育大会)の抜本的な改革を目指して、日本スポーツ協会は今月初め、有識者会議の設置を決めた。開催自治体の負担軽減策などを議論し、2024(令和6)年度内に提言をまとめる。人口減少や財政難といった課題を踏まえつつ、持続可能な仕組みを構築する必要がある。

 国スポは1946(昭和21)年、戦後のスポーツ振興を目的に始まり、原則として各都道府県の持ち回りで開かれてきた。秋季の本大会と冬季大会を実施し、都道府県対抗方式で男女総合優勝には天皇杯が授与される。1952年に本県を含む東北3県で、1995(平成7)年には本県単独で開催されている。今年から「国民スポーツ大会」に名称を変更した。

 全国知事会長を務める村井嘉浩宮城県知事が今年4月、「廃止も一つの考え方」と問題提起したのを契機に改革を求める声が各地で上がった。大会は2034年の沖縄県で2巡目を終える。費用と人手の面で開催自治体の負担が過重だと指摘されていた中、3巡目の在り方を検討する作業は避けられまい。

 「ふくしま国体」は開催費用として総額約220億円が投じられた。福島市内では県営あづま陸上競技場(現とうほうみんなのスタジアム)、市国体記念体育館(現福島トヨタクラウンアリーナ)などが新設され、福島西道路などの交通インフラも整えられた。県によると会場施設は今も有効活用されている。

 大会の開催効果は見いだせるとはいえ、内堀知事も4月の定例記者会見で「開催自治体の財政的、人的負担が大きいという課題がある」と語っている。地方財政は逼迫[ひっぱく]している。大会を継続するなら国や日本スポーツ協会も応分の負担をし、開催費用の大半を地元自治体が負担する形式は再考すべきではないか。

 全国高校総体のサッカー男子は、今夏からJヴィレッジ(楢葉・広野町)で固定開催される。国スポも競技によっては会場を固定するのも一案だろう。隣接する自治体間で広域開催し、会場を分散すれば開催地の負担は軽くなる。毎年ではなく隔年開催にするのも検討に値する。柔軟な発想で幅広く議論し、時代の潮流に合わせた大会にすることが大切だ。(浦山文夫)

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