小学校は制服?それとも私服? いまだに9割が標準服を導入している鹿児島県にも最近変化が…大切なのは「試行錯誤」と専門家

思い思いの服装で授業を受ける児童たち。県内で私服の学校は少数派だ=鹿児島市の谷山小学校

 「小学校によって、制服(標準服)のあるなしが分かれているのはなぜ」。子育て中の家庭から、南日本新聞に素朴な疑問が寄せられた。児童の服装は学校ごとの判断となっているが、鹿児島県内では9割が標準服を導入する。ただ、最近は男女共用ズボンの導入など、柔軟な対応も広がっているようだ。

 県教育委員会によると、県内の公立小495校のうち、標準服があるのは433校(2022年4月調査)だった。五つの市教委によると、鹿児島は78校中10校が私服(21年3月時点)。直近では、薩摩川内が23校中4校、鹿屋が23校中2校で私服、霧島、奄美では全校に標準服があった。

 標準服が目立つ中、どんな経緯で私服になったのか。「昔のことで分からない」とする学校が目立ったが、「転校生が多い地域だからでは」「引っ越しが多い家庭の負担に配慮したのかも」とみる関係者の声も聞かれた。実際に保護者の意見を踏まえ、私服に見直したところもあった。

 鹿児島市の谷山小は少なくとも1970年時点の卒業アルバムに、標準服姿の児童は見当たらない。長友充男校長(59)は「ずっと前から私服だったのでは」と推測する。学校運営に支障は感じておらず、「自分たちで気候や体調に合った服を選ぶ感覚を身に付けられる」と利点を挙げる。

 同市教委が5月に調査したところ、標準服がある学校でも男女共用のズボンやブレザーに変更したり、ポロシャツを導入したりと、最近になって変化が見られた。小学2年の長女が、標準服のスカートよりズボンを好んではくという母親(36)は「教育の現場でジェンダーレスが進んでうれしい」と評価する。

 お茶の水女子大学の内藤章江特別研究員(被服心理学)によると、全国的に小学校は私服の採用率が高い。制服や標準服は、児童の成長に合わせて買い換える頻度が多く、保護者の経済的な負担も大きいからだ。標準服がある学校でも、学校行事に出席する時だけ着用を求めるなど柔軟な対応が広がっているという。

 内藤氏は、標準服も私服も、それぞれメリットとデメリットがあると言い「学校生活を送る上で何を着るのがいいのか、どうすれば学校や地域らしさを出せるのか、みんなで考えることが大切。子どもの意見も聞いて話し合い、見直しが必要となれば実践を積み重ね、試行錯誤することが大事だ」と助言した。

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