バイデン氏言葉に詰まる場面も、トランプ氏は虚偽主張 初討論会

Helen Coster Steve Holland Joseph Ax

[アトランタ 27日 ロイター] - 11月の米大統領選に向け、民主党のバイデン現大統領(81)と共和党のトランプ前大統領(78)が27日夜、初のテレビ討論会に臨み、経済や中絶、移民などを巡って応酬した。

序盤のバイデン氏は時折声がかすれ、言葉に詰まる場面もあった。討論が進むにつれ調子を取り戻し、中盤には不倫口止め料不正会計処理事件で有罪評決を受けたトランプ氏を「重罪人」と呼んだ。

これに対してトランプ氏は、バイデン氏の次男が銃不法購入を巡り有罪評決を受けたことを持ち出した。

また、移民が犯罪の波を引き起こし、民主党が子殺しを支持しているといった、これまでのような虚偽の主張を含む攻撃を次から次へと繰り広げた。

ホワイトハウス関係者2人によると、バイデン氏は風邪をひいていた。ただ同氏の調子が不安定だったことは、続投するには高齢過ぎるとの有権者の懸念を高める可能性がある。

ある大口献金者は、バイデン氏のパフォーマンスは「失格」だとし、8月の党大会を前に同氏に撤退を求める声が再び高まるだろうと述べた。

ハリス副大統領は討論会終了後にCNNに出演し、バイデン氏の序盤の調子がさえなかったことを認めたが、有権者は在任期間中のパフォーマンスに基づいてバイデン氏とトランプ氏を評価すべきだと指摘した。

「私は過去3年半のパフォーマンスを見てきた。この90分間について、あなた方と一晩中話すつもりはない」と司会者に語った。

ミシガン州立大学の政治学教授マット・グロスマン氏は「明らかに最大の要因はバイデン氏が老けてかすれ声で、前回の選挙戦の時よりも一貫性がなくなって見えたことだ」と指摘。

「トランプ氏は支持を広げるようなことは特にしなかったが、バイデン氏の最大の弱点に関する人々の印象でそれがかすれていると思う」と話した。

<議会襲撃・中絶・移民で応酬>

トランプ氏は支持者の暴徒による2021年1月の連邦議会襲撃事件について問われると、一切の責任を認めず、逮捕された人々の多くは無実だと主張した。

バイデン氏は「この男には米国の民主主義のセンスがない」と嘲笑した。

また、ペンス前副大統領を含むトランプ政権で要職を務めたほぼ全員がトランプ氏を支持していないと指摘。同氏をよく知っているにもかかわらずに「なぜ彼らは支持しないのか?」と皮肉った。

さらに、保守派を連邦最高裁判事に指名することで人工妊娠中絶権の撤廃を可能にしたとしてトランプ氏を非難した。

トランプ氏は、中絶問題を各州に戻すことが正しい行動だと主張。バイデン氏が米南部国境の警備に失敗して多数の犯罪者が入国したと反撃し、「私はそれをバイデンの移民犯罪と呼んでいる」と述べた。

これに対しバイデン氏は「もう一度言うが、彼は誇張し、うそをついている」と訴えた。

<握手もせず不和あらわ>

討論会は無観客でCNNが1時間半にわたって放送した。発言時以外はマイクの音声を消す措置が取られた。

両氏は討論開始時に握手をしなかった。それ以外にも2人の不和が明らかになる場面は多く見られた。

互いを史上最悪の大統領とののしり合ったほか、バイデン氏はトランプ氏を「負け犬」、トランプ氏はバイデン氏を「災難」とそれぞれ呼んだ。

このほか経済を巡ってはバイデン氏は就任当初より物価が大幅に上昇したことを認める一方、コロナ流行を経て「事態を立て直した」と実績を強調した。

トランプ氏はコロナ禍前は自身の政権で「わが国史上最高(greatest)の経済」を謳歌していたと主張。コロナに伴う経済の急速な落ち込みがさらに悪化するのを防ぐために行動を起こしたと述べた。

2回目で最後となる討論会は9月に予定されている。

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