三笘薫2世? ひたすら1対1を繰り返す筑波大のドリブラー角昂志郎は、天皇杯柏戦に向けて意欲満々「勝つことしか考えていません」

筑波大のサイドで輝くドリブラー・角昂志郎は、天皇杯3回戦の柏レイソル戦に向けてその牙を研ぎ澄ませている。

筑波大は今、総理大臣杯出場権を懸けたアミノバイタルカップを戦っており、無事に夏の全国大会出場は手にした。だが、決戦に向けて彼らはホッとしている暇はない。

「関東リーグ、天皇杯、アミノバイタルカップと大会は変わっていますが、僕らは目の前の試合に勝つことしか考えていません。目の前にある戦いに向けて、常に準備をして全力を尽くす。それに変わりはないので、これまでの日常通りにきっちりとやっていきたいと思っています」

こう語る角の武器はドリブルにある。左右両方をこなすことができる彼は、サイドからスピードと切れ味する鋭い仕掛けで何度もサイドを切り裂いていく。

ドリブルの種類も、細かいタッチから相手の逆を突いたり、大きなタッチで一気にスピードアップしてぶっちぎったりと絶妙な緩急を駆使する。FC東京U-18時代から年代別日本代表にも名を連ねていた角は、筑波大でさらなる進化を見せて来季からのジュビロ磐田入り内定が決まっている。

トップ昇格ができず、大学4年間での成長を誓った彼は、まさに有言実行の日々を送っているが、その進化の一つの要因となっているのが、偉大な先輩の姿勢に影響を受けた自主トレだった。

「小井土(正亮)監督から『(三笘)薫と(山川)哲史は練習後にずっとひたすら1対1をやっていたぞ』と言われたんです。僕もドリブルが好きで、ドリブルをより自分の武器にしていきたいと思っていたので、僕もそれをやろうと思ったんです」

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現在はプレミアリーグのブライトンに所属する三笘は筑波大時代、自らのドリブルを磨くために同級生で対人の強さと駆け引きのうまさ、スピードを兼ね揃えていた山川(現・ヴィッセル神戸)と全体練習後の自主トレでひたすら1対1をやっていた。

「哲史は駆け引きも凄くて、毎回しっかりと考えながらやらないと抜けないんです」と当時、三笘自身も口にしていたように、ハイレベルな相手と何度も何度も1対1を繰り返したことで、唯一無二の武器をさらにブラッシュアップしていった。

その話を聞いた角もすぐに実践した。「僕だったら誰が一番成長する相手かなと考えたら、福井啓太だったんです」と話し、フィジカルの強さとスピード、自分の間合いを持った同級生のCB福井とひたすら1対1を繰り返した。

「啓太は駆け引きが本当に凄い。こっちが持つ選択肢を消しながら守備をしてくるし、球際も強くて、スピードに乗った相手もバチッと一発で止めることができる。強くて賢い、ずば抜けた地上戦の強さを持っているからこそ、いかに彼の間合いに入らないようにすることを常に意識しないといけません。彼の対応に対して、僕も自分の持っている引き出しから何を持って対抗するのかを考えながらやれるからこそ、常に成長させてもらえる相手なんです」

持ち前のアジリティとスピード、ボールタッチという天性の才能に加え、大学4年間で思考力が一気に高まったことで、角は変幻自在のドリブラーになることができた。

もちろん思考力の向上は福井との1対1だけではなく、筑波大のインテリジェンス溢れるプレーヤーたちに囲まれた環境で、自然と自分の活かし方、周りの活かし方を常日頃から考えてプレーしたことも大きく影響している。

「頭をフル稼働してプレーすることは、この大学の4年間でかなりやってきたことなので、それが自然と出せるようになってきていることが、自分の進化だと思っています」

冒頭で触れた通り、角は今、天皇杯3回戦の柏戦に向けてモチベーションを高めている。2回戦ではJ1首位のFC町田ゼルビアを相手にジャイアントキリングを起こし、大きな話題を呼んだ。

54分に途中出場した角は、「J1屈指の強度を持っているゼルビアさんに対して、技術も負けずに発揮できたし、フィジカル面でもやれる手応えを掴むことができた」という。

「これ(町田戦での手応え)は筑波大での日常の価値だと思っているからこそ、次のレイソル戦もやるべきことをやって勝つことしか考えていません。目の前の試合を自分たちが納得できるように戦っていきたい。臆することはありません」

進化と真価を示すべく、来るべき決戦に向けて、角の目に一点の曇りもない。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)

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