シーズンは2月から6月“聖地”オマハでの最終決戦カレッジ・ワールドシリーズへの道【アメリカ大学野球の世界:第2回】<SLUGGER>

花巻東高で通算140本塁打を放った佐々木麟太郎がスタンフォード大に入学したことで、にわかに脚光を浴びているアメリカの大学野球。ここでは、リーグ戦の仕組みや頂上決戦に至るまでの道炊事について説明する。

アメリカの大学野球というと、一般的にはNCAA(全米大学体育協会)が主催する試合を指すことが多い。NCAAに属する大学は1部リーグから3部リーグまでレベル分けされており、有名校、強豪校はほぼすべて1部リーグに属していると考えていい。

大学野球のシーズンは2月から6月まで。1部リーグに300校が参加しており、全米30のカンファレンス(連盟)に分かれてまずリーグ戦を行い、その後で全米王者を決めるカレッジ・ワールドシリーズ(CWS)出場を懸けた争いが展開される。

レギュラーシーズンに相当するカンファレス内のリーグ戦は約25~30試合前後行われ、5月下旬で終了。各カンファレンスの優勝校に加え、NCAAが選出した強豪校を含めた計64校がCWS進出を目指してトーナメント戦へと進む。

まずは16球場に4校ずつが振り分られ、ダブルエリミネーション方式で地区予選(リージョナル)が行われる。ここを勝ち抜いた16校は8組に分けられ、先に2勝した大学が勝者となる方式でスーパー・リージョナルを戦い、アメリカ大学野球の“聖地”オマハ(ネブラスカ州)で行われるカレッジ・ワールドシリーズ(CWS)へ進出する8校が決まる。

CWSもリージョナルと同じくダブルエリミネーション方式でトーナメントが行われ、決勝は2戦先勝。昨年はポール・スキーンズ(パイレーツ)擁するルイジアナ州立大がワイアット・ラングフォード(レンジャーズ)が所属するフロリダ大を2勝1敗で下して14年ぶりの優勝を果たした。

さて、レギュラーシーズンを戦うカンファレンスでは、参加大学の数も強さも偏りがある。最も競争レベルが高いとされるのが昨年CWS決勝に残った2校が所属するサウスイースタン・カンファレンス(SEC)で、今年も全14校のうち4校がCWS進出を果たしている。今年のMLBドラフトの注目選手も多くがSECでプレーしており、人材の宝庫と言っていい。

佐々木麟太郎が入学したスタンフォード大はPac-12というカンファレンスに所属している。「Pac」とはPacificの略で、その名の通り太平洋岸地域に位置する大学を中心とした12校で編成されている。スタンフォード大以外ではカリフォルニア大バークレー校、UCLAといった学業にも優れた名門校からUSC、アリゾナ大、アリゾナ州立大などスポーツ強豪校も所属する伝統豊かなカンファレンスだ。

1915年の創設から昨年までにNCAA史上最多となる通算561ものチャンピオン(男子/女子/混合も含めた全競技合計)を輩出していることから“Conference of Champions”(チャンピオンのカンファレンス)とも呼ばれている。

だが、2022年6月にUSCとUCLAが24年8月にPac-12を離脱してビッグ10・カンファレンスへ移籍することを表明したのを皮切りに他カンファレンスへの移籍表明が続き、昨年9月にはスタンフォード大もカリフォルニア大バークレー校とともにアトランティック・コースト・カンファレンス(ACC)への移籍を発表した。

現在のところ、今夏以降Pac-12に所属するのは2校のみとなっており、伝統カンファレンスの消滅が危惧されている。離脱の理由はカンファレンスごとに各メディアと契約する巨額放映権料の格差によるもの。環境を整え、有力選手をリクルートするために多くの収益が必要なのは事実だが、長年のライバル関係がなくなってしまうことを嘆く声も多く聞かれる。

スタンフォード大の宿敵といえば、何と言ってもカリフォルニア大バークレー校だ。特にアメフトでのライバル関係は1892年の初対戦から何度も名勝負を繰り広げており、両校の対戦は「Big Game」と呼ばれて毎年注目の一戦となる。アメフトほどではないが、野球においても両校のライバル意識は強烈。ともにACCへ移ったのも、そのような背景もあるからこそ。佐々木も、“伝統の一戦”でホームランを打った暁には一躍キャンパスのヒーローとなるに違いない。

文●城ノ井道人

【著者プロフィール】
しろのいみちと。会社勤めの後、渡米してMLB記者として全米を飛び回る。。日米問わず若手有望株への造詣が深く、仲間内で「日本版ファンタジーリーグ」を毎年開催し、次代のスター発掘に余念がない。

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