「80代姉妹の2000万円」介護施設元社長が横領疑い 姉妹はクーラーない部屋で食パン1枚分け合う暮らし さらに元従業員と養子縁組させ財産乗っ取りか

介護施設の元社長が高齢の姉妹から現金2000万円以上を横領した疑いなどで逮捕された事件で、元社長が知人を姉妹の妹と養子縁組させていたことが分かった。 大切な財産を守るには、どうしたらよいのか。

■高齢の姉妹はキャッシュカードを奪われクーラーのない集合住宅へ

横領の被害にあった80代の姉妹のもとを、去年、知人男性たちが訪ねた時の様子。

被害姉妹の妹:みんな表出てって
知人:それはなんで?
被害にあった姉妹の妹:『裏切られている』『裏切った』って怒られるから

知人と話したら『怒られる』とおびえる妹。この80代の姉妹のキャッシュカードを不正に使い、現金およそ2000万円を横領した疑いなどで、大阪市鶴見区で介護施設を運営していた西影由貴容疑者(38)が逮捕された。

被害姉妹の妹:私が悪いから逃げてきたねん
知人:何も悪いことない、何も間違ってない
被害姉妹の妹:私があの人(西影容疑者)らに相談したんや、『お姉ちゃんがこけてばっかりだから、どうしたらええかな』言うて
知人:それは介護の人に相談するのは当たり前のこと

姉妹は西影容疑者が運営する介護施設の利用者で、利用を初めてすぐ「妹さんはお金を使いすぎるから、僕が管理してあげる」と持ちかけられた。

身よりの無かった2人は、キャッシュカードを西影容疑者に渡した。その1年後、西影容疑者は姉妹の自宅を売却。姉妹はクーラーのない集合住宅に引っ越しをさせられたとみられる。

被害姉妹の妹:ここから出たい
知人:はよ出よ。デイサービスにも行ってないの?
被害姉妹の妹:行ってない

食パン1枚を分け合い、風呂が月に1度のこともあるほどの劣悪な環境。姉は熱中症になり、救急車で運ばれる事態となった。

そして、その翌月……捜査関係者によると、西影容疑者は、経営していた会社の従業員だった知人女性を、姉妹の妹と養子縁組させていた。

知人:あんな女、養女になんかしたらあかん…させられたんやんな?
被害姉妹の妹:カギ閉め…。一歩も外に出てへん
知人:そんなん体、弱ってしまう
被害姉妹の姉:『カギ閉めてへんからや』って、怒られるねん
被害姉妹の妹:出ていってここから。(女の人が)おんねん上に
知人:知ってるよ
被害姉妹の妹:女の人がおんねん、頼むから出ていって
知人:養女になってんの?おばちゃんの
被害姉妹の妹:うん

警察は、姉妹により近づき、財産を乗っ取りやすくしようとした疑いがあるとみている。 警察によると、西影容疑者は手に入れた金を借金の返済や、会社の赤字の補てんに使っていた疑いがあるということだ。 調べに対し西影容疑者は「お金の引き出しをお願いされたのでやったこと」と容疑を否認している。

■被害を防ぐためには「後見人を選ぶだけで安心せず、第三者の存在も重要」と専門家

80代の姉妹は、認知機能に問題はなかった。 被害を防ぐにはどうしたらいいのか。 専門家は…

日本高齢者虐待防止学会理事長 池田直樹弁護士:財産管理ということになるから、成年後見もあるんですけど、判断能力が劣ってきた人を補助するのが、成年後見

本人に代わり、後見人が財産管理などを行う成年後見制度。 「法定後見」は本人が認知症などで、判断できなくなった時に限り、裁判所が弁護士や司法書士などから後見人を選ぶ。 一方「任意後見」は、将来、判断能力が低下したときのためにあらかじめ後見人を選んでおく。

その上で、後見人を選ぶだけで安心せず、他に相談できる第三者の存在も重要だという。

日本高齢者虐待防止学会理事長 池田直樹弁護士:信頼していた人に裏切られるっていうリスクはないことはない。そういう信頼できる人の話に第三者がチェックをすると、二つの意見を聞きながら、最終的に自分が決める。1人だけを信用して結論を出すリスクっていうのはある

高齢者の財産管理。「自分の財産が狙われる危険がある」という心構えで、色々な判断をする必要がある。

■「介護倫理の制度の拡充を」

身寄りのない高齢者の財産をどう守るか、京都大学大学院の藤井聡教授はこのように話す。

京都大学大学院 藤井聡教授:やはり後見制度、これをしっかり拡充をして、こういう被害が出ないように、しっかり守っていくって制度が必要だと思います。ただ今回の事案は、介護施設で起こった問題で、その点に着目すると、今の後見制度に合わせて、『介護倫理の制度』これをしっかり作ることも、極めて重要ではないかと。

京都大学大学院 藤井聡教授:例えば一般的には今回のような事案は、入院してる普通の病院ではないですよね。なぜかというと、医療倫理が医師会においては確立をしていて、ある種の倫理が決まっています。医療制度よりも介護制度の方が、新しい制度なので倫理制度が気持ちの問題でも、制度の問題でも充分できていない。ここをしっかり確立していく議論を合わせてやっていくってことが極めて重要で、この問題を根こそぎ改善していくには、この医療倫理に加えて介護倫理の制度これをしっかり作ることが大事だと思います。

介護従事者が高齢者の財産を狙うケースが、大変増えている。これは経済的虐待とも言われていますが、被害の実情が見えにくい現状。対策が求められる。

(関西テレビ「newsランナー」2024年6月28日放送)

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