田んぼに出動「アイガモロボット」 新型機も登場 収量増に期待高まる

アイガモを田んぼに放して雑草をとってもらい無農薬でコメを作る「アイガモ農法」の世界にも、ロボットが登場しました。去年発売され、早くも新型機の実証試験が行われています。

5月、広島県庄原市東城町の農園であった農家と消費者の交流会です。農園では30年以上前からアイガモ農法による無農薬栽培でコメを作っています。

その象徴が田植えをした田んぼに子どもたちがアイガモのヒナを放すセレモニーです。そんなアイガモ農法の老舗でこの日驚くことがありました。スタッフが田んぼに運んだのは「アイガモロボ」です。

藤本農園 藤本聡社長「ついに来たなって感じ、むしろ」「アイガモってやっぱり襲われるので、ロボットカモができればっていう思いはずっとあったんです。でも思ったより形がだいぶ違うんですけど」

ロボットが動き出しました。本体は水に浮いていてスクリューが回って動きます。このスクリューの回転がポイントです。本物のアイガモは足で土をかき回し田んぼを濁らせることで雑草の光合成をしにくくし草の発生を抑えます。そのアイガモの足の役割をスクリューが果たします。実証試験では除草作業の回数が6割近く減りコメの収量が1割増えました。

東京の農業ベンチャー「NEWGREEN」が開発。去年の発売後、全国ですでに500台売れたそうです。

藤本社長「これは一つのアイガモ農法の中でも、一つの可能性かなと思って、巨費を投じたのですが…50万円です。ですが有機農業のニーズはこれから高まっていくので、そこにうまくマッチングできればなあと思っています」

同じころ、三次市の田んぼに登場したのはアイガモロボを改良した「安価版アイガモロボ」です。国の農研機構はその効果を調べる実証試験を、ことし広島県内6か所で行っています。

改良のポイントは、価格を安くすることや機体の軽量化などですが、一番はブラシが回転することです。

農研機構 浅見秀則研究員「この新型のタイプは地面に突き刺さる。結構、中山間って圃場が凸凹してたりする。そういうところでも導入できるようにというところですかね」

市販のロボットはスクリューが回転するため一定の水位が必要で田んぼをまっ平らにしなければなりません。安価版はブラシで土をかくため多少、凸凹があっても進むというのです。そのため広島県のような中山間地の条件の悪い田んぼでも使いやすいと期待されています。

しかし、課題もあります。実は、この2時間前トラブルが起きていました。ブラシが変形して動かなくなっていたのを田んぼの持ち主の農家が発見しました。

安田農産 安田剛社長「ブラシの変形で進まなくなったり」「ん、まあ試験なんでハハハ、まだ何とも言えないですけどね」「まあ除草剤使ってないにしては、よく抑えてるんじゃないですか」

半月後、ブラシの素材と形を変更したとメーカーが発表しました。素早い対応の背景には国が今、農薬や化学肥料を使わない有機農業を国策として推進していることがあります。農家も国の動向に敏感です。

安田剛さん「とにもかくにも有機栽培というのは、取っつきにくいというイメージがあるんで、とりあえずやってみると」「一つのブランドとしてのおコメができたらいいな」

実験開始から40日…農研機構が安価版の効果を調べました。

農研機構 浅見さん「こっちがロボット入れてない方で、こっちが入れた方、まあ何か体感ですけど、3分の一くらいには、なってますかね(Qロボット入れた方が?)ロボット入れた方が3分の一くらいには減ってるんじゃないですかね」

今後、コメの収量などを調査、早ければ来年春の実用化を目指します。近い将来広島県内各地の田んぼでアイガモロボが泳ぐ日が来るかも知れません。

© 株式会社中国放送