事件の重大性のみならず、県への情報提供がなかった点も問題となっている、沖縄で相次ぐ米兵の性暴力事件。もし正しく情報が共有されていれば先月の事件は防ぐことができたのではないか。識者に聞いた。
1997年に日米が合意した「事件・事故発生時における通報手続き」。
米軍の関係する事件事故に日本人が巻き込まれた場合、各地の防衛局が県や市町村に通報すると定められている。林官房長官は去年12月の事件がこの通報手続きに該当するものだとの認識を示した。
▽林官房長官 「日本人またはその財産に実質的な傷害または損害を与える可能性がある、事件事故が通報の対象とされておりまして本件のような事案はこれに該当するものというふうに考えております」
しかし、今回の事件ではこの手続きが機能することはなかった。
▽沖縄国際大学・前泊博盛教授
「誘拐事件が、そしてレイプ事件が起こっているにも関わらず、そのことを国民県民が知らされていない、再発するかもしれない状態にも関わらず、放置されてしまうというそんな状況があるんです」
前泊教授は、去年12月の事件が県側に正しく伝わっていれば、様々な再発防止策が取られていたはずだと指摘する。
「緊張関係にある時はしっかりと抑止力が働いて犯罪についても件数が減るんですよね」「日米両政府がしっかりと隊員教育、あるいは隊員に対する警鐘を鳴らしている場合には、犯罪はかなりの数抑止されていきます。そういう意味では、隠ぺいをしていたかのようなこの扱い、あるいは、情報が共有されていなかったこと、このことは大きな問題だと思いますね」
また、前泊教授は今回の県警の対応についても疑問を呈した。
「本来なら知事にまず報告をし、そして地域住民に対する警鐘をならし、そして誘拐事件に対処する、あるいは米軍がこういうことを起こしている、そのことに対して注意喚起が必要だったと思いますよ、そのことを県警がなぜ行わなかったのか」
「政治的な思惑がそこに働いていたとするならば、この国のですね、日米安保は国民を守るよりも、政治政局の方が優先されるというようなことになってしまいますね。これは非常にあってはならないことだと思いますよ」
【記者の視点】
日米安保の負担を沖縄に強いるなかで、情報提供がなされなかったことで米軍の綱紀粛正につながらず、事件を繰り返すことになってしまったのではないか。日米両政府は県民に説明する責任があるのではないでしょうか。(平田俊一)