鹿児島県警・前部長は無罪主張へ「隠ぺいを公にしようとした公益通報」 外部への郵送は認めるが、「秘密に該当しない」 証拠の正当性にも言及か

〈法廷イラスト〉6月5日に鹿児島簡裁であった勾留理由開示手続きに出廷した前県警部長

 職務上知り得た秘密を退職後に漏らしたとして、国家公務員法(守秘義務)違反の罪で起訴された前鹿児島県警生活安全部長の被告(60)が、公判で無罪を主張する方針であることが28日、分かった。被告の弁護人が明らかにした。「県警の隠蔽(いんぺい)を公にしようとした行為であり、公益通報またはそれに準じるものだ」などと訴える見通し。

 弁護人によると、霧島署員が巡回連絡簿を悪用した非公表事案や、当時未解決だった枕崎署員の盗撮容疑事件など複数の不祥事を、札幌市の男性記者(55)に書面で郵送した事実は認める。その上で「公にしようとした内容は同法が保護する『秘密』に該当しない。正当行為として無罪になると考えている」としている。

 県警が別の警察官による情報漏えい事件の関係先として福岡市のウェブメディアを4月上旬に家宅捜索した際、札幌市の男性記者からメールで送られていた被告の書面データが見つかった疑いがあると指摘。「違法な捜索や差し押さえがあった可能性がある。もし証拠として認められなければ、罪は立証できない」とも訴えている。

 被告はこれまでに「野川明輝本部長が県警職員の犯罪行為を隠蔽しようとした」と主張している。県警側は6月21日の記者会見で、被告の主張を否定した上で「公益通報には当たらない」と反論。ウェブメディアへの捜索も「適正な捜査だった」との見解を示している。

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