「杉本文庫」が復活 善一さん、両親の遺志継ぎ 教員親子「自ら学んで」と願い

児童と一緒に杉本文庫復活を喜ぶ杉本さん(右)=南砺市福光中部小

  ●南砺・福光中部小に図書寄贈

 南砺市福光中部小で、一度は役割を終えてなくなった図書コーナー「杉本文庫」が復活した。文庫は2001(平成13)年に亡くなった元教頭杉本善六さんの遺族の寄付で02年に創設されたが、長年読まれた本が傷み、3年前の新図書室整備で廃止された。今回の復活は長男の元教員善一さん(65)が遺志を継ぎ、「子どもたちが自ら学んでほしい」と本を寄贈したためで、7月1日から貸し出される。

 杉本善六さんは中学校の体育教員で厳しくも優しい先生として知られた。福光中部小では教頭を務めた。当時、図書室がなく、家族が善六さんの遺志に基づき、旧福光町に寄付し、図書約50冊の杉本文庫が開設された。善一さんによると、本を寄贈したのは、児童自らが自己を啓発する学校の理念「自啓教育」に読書がふさわしいとの思いからだった。

 その後、蔵書が古くなり、2021年の福光中部小の大規模改修で図書室が新たに整備されたのに合わせて古い本が廃棄され、杉本文庫もなくなっていた。

 文庫の復活は善六さんの妻潤子さんも願っていた。潤子さんも福光中部小の元教員で、今年2月に亡くなるまで「杉本文庫が続いてほしい」との願いを持っていた。

 善一さんも福光中部小で教えたことがある元教員で、父と母の遺志、願いをかなえたいと高田公美校長に相談し、杉本文庫の復活が決まった。

 文庫には動植物の図鑑や童謡集、詩の入門、オリンピック図鑑など児童の調べものに役立つ本がそろえられた。

 学校で市の感謝状を受け取った杉本さんは「両親が喜んでいると思う」と語った。高田校長も「全校児童が本を借りて学んでほしい」と話し「自啓教育」を深める本の寄贈に感謝した。

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