【識者展望】森保ジャパン、W杯最終予選は楽勝? 苦戦? 豪州&サウジと戦い慣れているのはメリット。理想は2試合を残して2位以内確定

日本は北中米ワールドカップのアジア最終予選でオーストラリア、サウジアラビア、バーレーン、中国、インドネシアと同組に。ホーム&アウェーで計10試合を戦い、2位以上なら自動で本大会に出場、3位か4位の場合はプレーオフに進み、6か国で残り2.5枠を争うことになる。

本大会の出場国が32から48に拡大されて、アジアに8.5枠が与えられるという報道が出た時点では、もう予選敗退の可能性が無くなったかのような意見も多く見られたし、筆者もその例外ではなかった。

しかし、いざ抽選会で3つの組に分けられて、それぞれ上位2か国という枠で見ると、決して簡単ではないことが分かる。

また準々決勝で敗退したアジアカップを振り返っても、アジアでの戦いはW杯の本大会とは異質の難しさがあり、シンプルに選手の“個の力”やプレーの強度を上げるだけで、全ての試合で圧倒できるような単純明快なものではない。

ただ、アジアを勝ち抜く難しさを考えて、今回のC組は決して悪い組分けではない。

たとえばポット6では、2次予選で苦しめられ、アウェーがどこで行なわれるか不透明な北朝鮮と、最終予選でも同組になることは避けられた。ポット4にはアジア上位のポテンシャルを持つUAEもいたが、北朝鮮と同じく、イランとアジア王者のカタールがいるA組に入った。

同じくポット4のオマーンは前回の初戦で、ホームながら敗れた因縁の相手だが、韓国と同じB組に。一方でバーレーンにはアジアカップのラウンド16で3-1と勝利している。簡単な相手ではないが、選手の特長や戦い方なども想定しやすい。

日本はイラン、韓国とともにポット1だったが正直、ポット3まではどこも力のある国で、厳しい戦いになることは想定できる国ばかり。その中でC組は日本、オーストラリア、サウジアラビアとなった。

シンプルにFIFAランキングを見ると、それぞれのポットの最上位国が集まった格好だが、オーストラリアは4大会連続、サウジアラビアも3大会連続で同じ組となっており、戦い慣れているのはメリットだ。

両国の戦術も、徹底的に守りを固めてロングボールという形ではなく、オーストラリアはポジショナルプレーをベースとした、ボールを幅広く繋いでいくサッカーで、サウジアラビアはアジアの中でも最もポゼッション思考が強い。

たとえばアジアカップのグループステージで日本が敗れたイラクやアジアカップ準優勝のヨルダンといった国は、日本にとって噛み合わせがあまり良くない。そして、どちらかというとアジアの戦いに向き合うことを求められる。

そうした基準で見ると、オーストラリアとサウジアラビアが同組に入ったことで、ある程度、世界の戦いを想定した準備も進めながら最終予選を戦っていくことができるだろう。

【PHOTO】コンセプトはFIRE(炎)! 日本代表が新ユニホームを発表! 久保建英、長谷川唯ら選手着用ショット!

筆者が多少、懸念しているのは、最初の2試合を戦う9月は欧州リーグが開幕したばかりで、日本の主力の大半を占める“欧州組”のコンディションが100とは言い難いことだ。開幕戦からスタメンで出られていない選手はなおさらだろう。

日程を見ると9月5日の初戦がホームの中国戦、同10日がアウェーのバーレーン戦となるが、第二次森保ジャパンに複数回、招集されているメンバーが30人を超える選手層を考えれば、その時にしっかりと試合に出ている選手を中心に招集、起用を考えても良いのではないか。

最終的に首位突破を決めた前回も、苦戦した理由が最初のオマーン戦に敗れたことだった。そして10月には前回と全く同じ順番で、アウェーのサウジアラビア戦、ホームのオーストラリア戦が待っている。9月の2試合で連勝して、良い流れで10月シリーズに乗り込んでいきたい。

まず何より大事なのは最終予選を突破して、無事に本大会へと駒を進めることだが、世界で勝つことを目ざすためには、最後の2試合を待たずに突破を決めることが理想ではある。

2014年のザックジャパンでは、5か国で最終予選を戦い、7試合目となる6月のオーストラリア戦で突破を決めたが、実は3月にアウェーのヨルダン戦で勝利すれば、2試合を残して突破が決まるはずだった。

しかし、1-2でまさかの敗戦となり、突破が6月シリーズに持ち越されたことで、テスト的なメンバーを招集することができず、そのままW杯のプレ大会だったコンフェデレーションズカップに臨むことになった。

そのことで新戦力のテストが後手後手になり、惨敗に終わったブラジルW杯に大きく響いたことは、日本代表の苦い経験であり、教訓でもある。

予選後、本大会を見据えた残り1年のマッチメイクがどうなるかは現時点で知る由もないが、最終的に突破を決めるのはマストとして、できる限り勝点3を重ねていって、来年3月の2試合目となるホームのサウジアラビア戦までに2位以内を確定させて、最後の2試合は世界への足がかりにすることができたら理想的だ。

文●河治良幸

© 日本スポーツ企画出版社