電動スーツケースが公道走行で「全国初摘発」 電動キックボードとの違いは…街では広まらない理由

※画像はairwheelの公式アカウント『@airwheel.luggage』より

車道を走る車の横をスーッと音もなく通り抜けていく電動キックボード。レンタルサービスも普及し、街中で見かけない日はほとんどなくなったこの乗り物。気軽に中距離の移動ができるとして、若者を中心に高い注目を集めているようだ。それに匹敵する便利な“乗り物”が現在、市場には登場しているという。

「ずばり、電動スーツケースです。リチウムイオンバッテリーを搭載しており、最高時速10キロ台で走り回る。羽田空港や成田空港、関西国際空港などアジア圏からの旅行者が押し寄せるハブ空港では徐々にその姿を見かけるようになりました」(エンタメ誌ライター)

しかし、この乗り物には大きな欠点があるという。

「電動スーツケースはあくまでも利用者が空港内を走ることを前提に作られていて、公道で走ることを想定していません。そんななか、6月26日、大阪市内の歩道を最高時速13キロの電動スーツケースで走行していたとして、30代の中国人留学生女性が全国で初めて書類送検されたことが判明しています」(前同)

電動キックボードは公道を走ることができるにもかかわらず、電動スーツケースはなぜ、公道を走ることができないのか。『新・自転車“道交法”BOOK』(エイ出版社)などの著書があり、小型モビリティーに詳しい疋田智氏に話を聞いた。

「そもそも、書類送検された女性は電動スーツケースに乗って歩道を走っています。電動キックボードを使用する際も歩道を走る際は最高時速6キロまで。女性の電動スーツケースは最高時速13キロとのことですし、歩道を走ることがそもそも違法。仮に時速13キロものスピードで電動キックボードが歩道を走っていたとしたら同じように違法です」(疋田氏)

■電動キックボードと電動スーツケースの大きな違い

また、電動キックボードと電動スーツケースには大きな違いがあるという。

「2023年7月1日に施行された改正道路交通法だと、車体の大きさが長さ190センチ以下で幅60センチ以下、時速20キロ以下で走る電動モビリティーは、特定小型原動機付自転車という扱いになりました。“小型原付”扱いですので公道を走る際は、ナンバープレートの着用が必須となります。一方、あくまでも公道以外での使用を目的としている電動スーツケースにはナンバープレートは取り付けられていません」(前出の疋田氏)

最高時速20キロ以内で街中を走る特定小型原動機付自転車は、16歳以上であれば運転免許は不要。ただし、公道を走る際にはナンバープレートは必須となる。そのため、特定小型原動機付き自転車としての規格を満たしているにもかかわらず、ナンバープレートを装着していない電動スーツケースは公道を走ることができないというわけだ。また、電動スーツケースには安全上、大きな欠点があると疋田氏は指摘する。

「電動スーツケースはリチウムイオンバッテリーを使っている。リチウムイオンバッテリーはまれに発火事故が起こります。その際に特殊な消火器を使う必要があるんです。空港で火事が起きた際にも、万が一この特殊な消火器が手の届くところになければ大惨事へとつながりかねません。日常利用に向いているとはとても言えませんね」(前同)

電動キックボード同様に電動スーツケースが街中で頻繁に目撃される――という日が来ることはどうやらなさそうだ。

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