「ハーブは暮らしに役立ててこそ、楽しい!」と話すのは、長年にわたってハーブを育て、その利用法を研究してきた桐原春子さん。本連載では、毎回1種類のハーブを取り上げ、栽培方法や活用方法、歴史などを教えていただきます。今回は【トウガラシ】です。
本連載の他、桐原春子さんの記事は↓↓
刺激的な辛みが特徴の【トウガラシ】
日本では七味唐辛子や一味唐辛子に利用されるとても身近なハーブ。
刺激的な辛みが世界各地で重宝され、地域に合ったたくさんの品種が出回っています。
別名/レッドペッパー
科名/ナス科
性質/一年草
草丈/40~60㎝
カプサイシンを含み、肥満防止の効果も
トウガラシは中南米が原産で、コロンブスによって15世紀後半にヨーロッパに伝えられたハーブ。日本には室町時代後期にポルトガル人によってもたらされたといわれています。
原産地では低木ですが非耐寒性のため、温帯地域では一年草として扱われます。
桐原春子さんによると、「刺激的な辛みが好まれ、世界各地でハバネロやハラペーニョなど、土地に合った変種が生まれました。アメリカのペッパーソース、中国の豆板醤もトウガラシが原料です。日本でも江戸時代にはすでにトウガラシの品種改良がなされ、明治初期の図本には52種類のトウガラシが描かれています」。
トウガラシにはビタミン類の他、辛み成分のカプサイシンが含まれ、血行促進、発汗、胃液分泌促進作用などがあり、生薬の原料にもなっています。
「発汗作用があるので熱帯地方の料理に盛んに使われる一方、体を温める作用もあるので寒い地方の料理にも欠かせません。カプサイシンは脂肪の分解を助け、肥満防止にも役立ちます」
また、シシトウガラシのように辛みの少ない種類もあります。
実も葉も食用にでき、クラフトにも活用
トウガラシは生の果実を酢漬けやオイル漬けにする他、乾燥・保存もでき、煮込み料理や炒め物の辛みづけに幅広く利用されます。
未熟な果実は青トウガラシとして酢漬けやゆずこしょうの材料に、葉は佃煮に利用できます。
「赤トウガラシは色が鮮やかなので、料理の他にクラフトにも使われます」
栽培は比較的容易で、タネからも育てられますが、苗が多く出回っています。
「ただ、生育適温が高いため寒冷地では育ちにくいです。苗は苦土石灰を入れた用土に植え、日当たりと水はけのよい場所で育てます」
赤い実も青い実も食用に
春にタネをまいたトウガラシ。秋にはここまで育って実をつけました。
鉢をペイントし、レモングラスで土をカバーしたらぐっとおしゃれに。
夏に白い小花を咲かせた後、実が上向きにつきます。未熟な青い実は次第に色づいて赤く完熟しますが、赤、青、どちらも食用に適します。
活用アイデア① トウガラシのリース
収穫したてのトウガラシで料理用のリースを作りました。リース台は直径25㎝の市販品で、トウガラシは実を5、6個つけた長さ13㎝ほどの枝を14本用意。
枝をバランスよく配置し、フラワーアレンジ用のワイヤでしっかりと台に巻きつけます。すき間があれば別のトウガラシを差し込んで。
風通しのよい場所に飾り、必要なときにつまんで使いましょう。燃えるような赤が料理を楽しくしてくれそう。ドライのトウガラシでも作れます。
活用アイデア② ピカンテオイル
ピカンテとはイタリア語で「辛い」という意味。エキストラバージンオリーブ油にドライのトウガラシを好みの分量加え、1週間ほどおくと風味と辛みが絶妙なオイルに。
ペペロンチーノなどのオイル系のパスタに使ったり、ピザにかけたり、アヒージョに使ったりとさまざまに利用できます。
活用アイデア③ ねぎワンタン
ゆでたてのワンタンにねぎをたっぷりとのせ、熱々のトウガラシ油をジャッとかけて食べる幸せ。ワンタンの皮が香りのよい油をまとって、よりなめらかに。
肉は少量にするのがポイントで、ねぎは薄い小口切りでもOKです。
作り方(1人分)
❶耐熱容器に合びき肉50gを入れ、塩少々を加えて混ぜる。電子レンジ(600W)で30秒ほど加熱する。
❷ワンタンの皮15枚を用意する。①を少量ずつのせ、図のように折りたたみ、皮の重なった部分の縁に水をつけて閉じる。これを15個作る。
❸鍋にたっぷりの湯を沸かし、②を入れて、②が浮き上がってくるまでゆでる。ざるに上げて湯をきり、器に盛って白髪ねぎ½本分をのせる。
❹小鍋にごま油大さじ3とトウガラシ(フレッシュまたはドライ)を好みの本数入れて火にかけ、煙が立つ手前まで加熱し、火を止める。
❺③のねぎの上に④の油をかけ、④のトウガラシをのせ、しょうゆ適量をかける。
撮影/川部米応 イラスト/山田 円
※この記事は「ゆうゆう」2023年1月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。
※2023年10月22日に配信した記事を再編集しています。
監修者
園芸研究家 桐原春子
英国ハーブソサエティー終身会員。長年、自宅でさまざまな植物を育て、家庭での実用的かつ美しい庭づくりを提唱。国内外の多くの庭を訪れ、ハーブの歴史、育て方、利用法を研究。カルチャースクールでハーブ教室の講師を務める。『知識ゼロからの食べる庭づくり』(幻冬舎)など著書多数。ブログ「桐原春子のハーブダイヤリー」やインスタグラムでも情報を発信中。