【テニスギア講座】ラケットのカラーリングには意味がある!? 好みのモデルを選ぶのに役立つシグナルイメージ<SMASH>

今回のテーマは「テニスラケットのカラーリング」です。近年、イメージカラーによってラケットの個性や適応プレーヤーを示す傾向があります。今回はその読み取り方について説明しましょう。

ラケットがウッド系からカーボン系に移り変わったのが、今からおよそ40年前の1980年代前半。カーボン系ラケットのイメージは「黒」で、プロケネックス『ブラックエース』、スポルディング『GC20』などの超大ヒットモデルが並びますが、ほぼ全てが黒ベースにピンストライプなどのアクセントカラーでした。

そのイメージを今も残しているのが、プリンス『グラファイト』ですね。それぞれの時代に適応しながら、伝説のラケットとして生き残っています。

当時もカラーコスメのモデルはありましたが、どれも「初中級クラス向け」の感じで、本格モデルは、みんな黒! それが強さの象徴のような雰囲気で打ち出されていました。

黒以外のカラーがそのモデルのアイデンティティーを示すようになったきっかけは、ヘッド『プレステージ』の「赤」でした。最初のモデルは深い茶赤でしたが、以降メタリックレッドが『プレステージ』の紋章となります。

また86年にカラーで鮮烈な印象を与えたのは、プリンス『スペクトラムコンプ』の「純白」。これがきっかけで、ハイグレードモデルにもグレーやシルバーという塗装が増えますが、「このモデルはこの色!」という決め込みモデルは現れません。
そこに登場したのがバボラです。ストリングメーカーとして長い実績を誇るバボラ社が、ついにラケットの開発に乗り出し、『ピュアドライブ』が完成したのが94年。モヤやロディックなどの活躍により、『ピュアドライブ』は世界的にヒットし、99年、日本に上陸した時には、日本テニス市場にも「青いラケット旋風」が吹き荒れます。

これが現在の「シグナルシステム」……つまりフレームのカラーと適応スタイルとの関連性をイメージ化した始まりだったと言っていいでしょう。

青の次は「黄色」です。ナダルの台頭によって『アエロプロドライブ』(現ピュアアエロ)の黄色いラケットが大流行。以降、何度もモデルチェンジを繰り返しつつも、イメージカラーは今も黄色です。

この流れから「ドライブ(パワー)系は青、スピンは黄」のイメージが世界に浸透し、最後に加わった薄ラケタイプ『ピュアストライク』は「赤の系統」に乗ることになりました。
一方、元祖赤の系統『プレステージ』を生んだヘッドでは、その後に『インスティンクト』で青の系統に乗りますが、現在では『エクストリーム』が黄の系統としてヘッドのスピン系モデルをしょって立っています。

さて、もう1つ赤の系統で名を馳せたのが、ヨネックス『RD』シリーズです。フレーム全体を鮮烈な赤で覆った一連の継承モデルは、多くのトッププロが愛用し、『Vコア』に受け継がれてからも、通称「赤ラケ」と呼ばれて親しまれています。また青の系統としては『Eゾーン』シリーズがそのイメージを守っています。
近年、日本発のブランドとなったダンロップは、世界戦略として「わかりやすさ」を重視し、「カラー=スタイルイメージ」を明確に打ち出しました。

薄ラケボックスフレームでコントロール重視が『CX』シリーズ、中厚スピン系が『SX』シリーズ、そして中厚ドライブ系が『FX』シリーズと「赤」「黄」「青」でしっかり色分けされ、自分のスタイルイメージを持っていれば、どれを選んだらいいかがわかりやすいという評判です。

最初に挙げたバボラと、最後のダンロップは、ラインナップ全てにおいて統一されているブランドで、バボラは歴代の「もはや伝統」として確固たる道を歩み、ダンロップもしばらくはこの方針を受け継いでいくことでしょう。また他ブランドも「赤」「黄」「青」のシグナルイメージを、どこかに取り込んでいくのではないでしょうか。

もちろん全てではありませんが、ラケット選びの際に、まず目標モデルを絞り込むのに役立てられると思いますよ。

文●松尾高司(KAI project)
※『スマッシュ』2022年11月号より抜粋・再編集

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