全米シニアで単独首位ターン アプローチの名手・藤田寛之のSWはなぜ“58.5度”なのか?

藤田寛之がウェッジのこだわりを語る(撮影:田中宏幸)

「全米シニアオープン」でトータル11アンダーまで伸ばし、単独首位で決勝ラウンドに進んだ藤田寛之。飛距離をカバーするショートゲームを武器に、レギュラーツアーでは通算18勝を挙げ、2012年には43歳で賞金王に輝いた。レギュラーツアー今季初出場となった「関西オープン」ではウェッジのこだわりについて聞いている。

「好みはずっと変わってないですね。ソールが広めでありながらラウンドが付いていて、ヒール側を落とし込んでいる。フェースを開いたときにバンスが同じように当たるソールが好きなんですよ。あとはメッキなしのほうが打感は良いですね」

藤田のバッグに今入っているのはボーケイSM10のMグラインド。バンス角は8度だが開いてもリーディングエッジが浮きすぎない仕様となっている。もともとMグラインドはあらゆるライからボールを拾えるソールだ。このウェッジの表記は58度だが、藤田は0.5度寝かせて、58.5度で使う。この“0.5度”にはどんな意味があるのか。

「自分が(四大)メジャーに行っていた10年くらい前は59.5度までいったんです。向こうに行くと、ラフでフェースを開けない。下が硬いから開いてカットに打つと弾いてしまう。だからロフトをつけてアゴを出していくしかないんですよね。日本ではそんなの要らないんですけどね。それが59度になって、58.5度で止まっている。歴史の跡です(笑)」

四大メジャーを経験する前、日本だけでプレーしていた頃は58度を使っていた藤田。それがメジャーの芝に対応するために59.5度まで寝かせて、シニアになった現在は58.5度まで戻ってきたというわけだ。

ウェッジで調整を重ねてきたのはもちろんロフトだけではない。「芝が薄いところとか、地面が硬いところにいくとバンスが当たりやすい。スピンをかけようとして上から入れると弾いちゃう。その対応としてローバンスを1本準備していきます。去年出た海外メジャーは全部ローバンスです」。藤田は昨年も「全米プロシニア」「全米シニアオープン」「全英シニアオープン」の3試合に出場している。レギュラー時代にメジャーで跳ね返された経験が、今もしっかり生きている。

また、使い終わったクラブにも藤田なりのルールがある。「ウェッジには『2021年シーズン』とか必ずマジックで書いて全部とっておいています。メーカーさんが自分用に作ってくれたクラブは人にあげないんですよね。自分もプロだけど、向こうもプロでそういう仕事を僕にしてくれたから、それを他の人にはあげられない。ヤマハのクラブはヤマハに返しちゃう。ボーケイはキャディバッグ2本分くらいにはなっています」。

四大メジャー出場をきっかけに試行錯誤を重ね、手に馴染んだウェッジで、13年の「全米プロシニア」で優勝した井戸木鴻樹以来のシニアメジャー制覇に突き進む。

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