『Zガンダム』最高の天才だった? 最強パイロット「パプテマス・シロッコ」という生き様

アニメ『機動戦士Zガンダム』DVD第13巻より、パプテマス・シロッコ

『ガンダム』シリーズの敵役には、魅力的なキャラクターが多い。中でもシャア・アズナブルやハマーン・カーンは、複数の宇宙世紀作品に出演しているため知名度は抜群。『ガンダム』シリーズの敵役として、最上位の人気キャラクターである。

そんな2人のキャラクターと三つ巴のバトルをしたのがパプテマス・シロッコだ。宇宙世紀のメイン作品では『機動戦士Zガンダム』のみで、しかも第10話「再会」からと、ライバルキャラとしては遅めの登場であったが、その圧倒的な存在感から、シャアやハマーンに迫る人気敵キャラクターである。今回はそんなシロッコの生き様を、考察も交えながら振り返っていこう。

■『Zガンダム』に鳴り物入りで登場した天才

巨大資源採掘船ジュピトリスを任され、木星船団を率いるパプテマス・シロッコ。モビルスーツの主燃料となるヘリウム3採掘の責任者ということは、かなり重要なポジションである。

そんなシロッコが木星から帰還したところで、本編のストーリーに関わってくる。

自らが設計開発した可変モビルアーマー「メッサーラ」に乗り、単機でテンプテーションを襲撃。エマ・シーンを含むエゥーゴの艦隊を、苦もなく退ける。その後、主人公のカミーユ・ビダン、クワトロ・バジーナと交戦することになり撤退した。

こういったシチュエーションの場合、『ガンダム』シリーズでは、その多くが機体を撃墜されるのだが、シロッコの場合は撃墜されずに撤退。他の敵役パイロットとは一味違う凄みを見せつけた場面だ。

■モビルスーツ開発やカリスマ性、実は裏方が向いていた?

初登場以後も、宇宙世紀最強格のハマーンやシャアと互角の戦いをするなど、高いニュータイプの資質を持つ人物として、パイロットとしても華々しい活躍を見せるシロッコ。しかし戦闘以外でも優秀である。

木星から帰るなり、ティターンズの最高司令官ジャミトフ・ハイマンと接触。見る見るうちに、実質的にティターンズで3番目の権力者となる。

そして前述のメッサーラをはじめ、可変モビルスーツ「ガブスレイ」や「ジ・O」といった名機を生み出したモビルスーツ開発者としての顔も持つ。

シャアをニュータイプのなり損ないと言ったり、ハマーンに対しては彼女の駆る「キュベレイ」を下に見ていたりと、迫力や名声に惑わされずに本質を突くようなセリフも目立つ。優れた洞察力を持っている人物といえるかもしれない。

ジェリド・メサやヤザン・ゲーブルといった優秀なパイロットを味方に付けたり、女性による世界統治を目標にし、実際にサラ・ザビアロフやレコア・ロンドを味方に引き入れてしまったりと、カリスマ性も非常に高い。

しかし、自分を天才だと自負するなど、傲慢さがあるのは否めず。その自信が隙を生み出してしまうことがしばしばあったが、意外にシロッコ自身はそれを自覚していたのではないか。女性をトップに立たせるという目論み自体が、自分が裏方に徹することでその弱点を抑え込むため……と、考えることもできるからだ。

■弱点は慢心だった? シロッコの最期

自らを天才だと信じ、宇宙でも撃墜されない前提で、パイロットスーツを着ないという自信家のシロッコ。しかし、最後はその自信が命取りとなってしまう。

『Zガンダム』の最終局面では、シャアとハマーンという2大ビッグネームに肩を並べられたことに興奮したのか、本来の目的である、コロニーレーザー発射の阻止よりも、二人と語ることを優先。結果、コロニーレーザーは発射され、ティターンズ艦隊は壊滅することになる。

さらに、自分に知識のない、バイオセンサーの特殊な反応には理解が追い付かず、ジ・Oが操縦不能に。ウェイブライダーの突撃が直撃することとなる。

超常的なことが起きたとはいえ、自らの知識と、自分が設計したモビルスーツの性能を信じたが故の敗北となってしまった。

周りの人物を足手まといだとまで思う、シロッコの傲慢さが仇となってしまった最期であるが、逆に、それがなければほぼ完璧な人間だったとも言える。総合的な能力は宇宙世紀最強、つまり自負するだけでなく、本物の天才であったのかもしれない。

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