「役立たずのブタ!」社会現象をも引き起こしたキング・オブ・昼ドラ『牡丹と薔薇』はどんなだった?

『牡丹と薔薇』全12巻(ポニーキャニオン)

みなさんは「昼ドラ」といえば、どんなイメージがあるだろうか? ハートフルでほっこりする作品もあったが、印象に残るものといえばやはり男女の恋愛を中心とした愛憎渦巻くドロドロのドラマではないだろうか。

これまで昼ドラでは、多くの裏切りが登場するような激情型ドラマが放送されてきた。そのなかでも群を抜いて知名度が高いドラマといえば、フジテレビ系列で2004年から放送された『牡丹と薔薇』だろう。今回は『牡丹と薔薇』がどのようなドラマだったのかを振り返りたい。

■これぞ昼ドラ! 運命に翻弄される姉妹の血みどろの葛藤劇

『牡丹と薔薇』は東海テレビ制作、フジテレビ系列にて、2004年1月から全60回放送された昼ドラである。

主役は2人。可哀そうなヒロイン・ぼたん(真世)を演じたのは大河内奈々子さん、そしてぼたんをイジメ抜く強烈な性格をしたもう一人のヒロイン・香世を演じたのは、小沢真珠さんだ。

本作のあらすじはこうだ。川上麻衣子さん演じる看護婦の鏡子には、神保悟志さん演じる年下の恋人・豊樹がいた。最初は幸せだった2人だが、とあることがきっかけで豊樹は北原佐和子さん演じる野島富貴子と恋に落ち、その結果、子どもも生まれてしまう。しかしその子どもは、略奪され復讐心に燃える鏡子によって誘拐され、ぼたんと名づけられ育てられる。

野島夫妻は子どもを失った悲しみのなか、翌年、もう一人の娘・香世を授かる。ぼたんと香世はお互いの出生の秘密を知らないまま大人になり、後日、運命の出会いを果たすのであった。

このように『牡丹と薔薇』はスタートから設定が激しく、主役の2人は略奪婚の末に誕生していたり、誘拐されたりしている。

そしてその後ぼたんは野島家の家政婦として働くようになるのだが、このとき香世から受けるイジメが凄まじい。現実なら通報されてもおかしくないようなものだが、女王様のような目線でとことんイジメぬく小沢さんの迫真の演技に、つい目が離せなくなってしまうのだ。

■「裏切り」や「怨念」など過激なタイトルもドロドロのオンパレード

『牡丹と薔薇』は、愛憎渦巻くキング・オブ・昼ドラというべく、毎回激しい内容で話題になった。

まず、回ごとのタイトルが凄まじい。例を挙げると、第7話は「怨念の遺書...」、第9話は「疑惑のミルク缶」、第13話「裏切りの情事」、第32話「嫉妬の小悪魔」……など、よくもまあこんなドロドロとしたタイトルを思いつくものだと感心してしまう。

そしてタイトルに負けない劇的なドラマ展開もすさまじい。たとえば、第39話「延期された結婚」では香世が男たちに依頼し、ぼたんを襲撃させる。それを知った父・豊樹は怒って香世を殴りつけ、さらにぼたんの義父である友重も登場。包丁をふりかざして香世に襲いかかるのだが、香世を守ろうとしたぼたんが飛び出し刺されてしまうのだ。

このように本作は、悲惨な展開→激高した人物が襲い掛かる→それをかばった人が病院へ運びこまれるなど、1話のなかでも怒涛の熱い展開が続く。

今日は誰がどうなっていくのかが気になり、1度見たら次の日も欠かさず見てしまうようなドラマだったのである。

■香世が言い放つ強烈なセリフは社会現象にもなった

『牡丹と薔薇』を一躍有名にしたのは、小沢さん演じる香世による強烈なイジメだろう。家政婦として野島家にやってきたぼたんに対し、香世はやりたい放題。目の前に足を突き出して「ストッキングを脱がせなさいって言ってるの!」と叫んだり、いやがるぼたんの頬を赤いマニキュアを塗った長い爪で思い切りつねったり……。

極めつけは第22話「意地悪なバラ」でのこと。自分の要望とは異なるドレスを持ってくるぼたんに対し「役たたずのブタ! ぼたんじゃなくてブタよ!」と、言い放つのであった。

この強烈なセリフは当時社会現象にもなり、「ボタバラ旋風」を引き起こした。演じていた小沢さんも、のちに一番印象に残っているセリフだったと明かしている。

また『牡丹と薔薇』に登場する伝説的なメニュー「財布ステーキ」も忘れられない。これは、香世が西村和彦さん演じる夫・由岐雄の浮気に嫉妬して提供したものである。

一見美味しそうなステーキに見えるものの、なぜかナイフでは切れない。恐ろしいBGMとともにステーキの内側から登場したのは、なんと“高級牛革3000円”のタグであった。「なんなんだこれは!」と怒る由岐雄に対し、香世は「あっ、コショウが足りなかったかしら?」と、おどけてみせる……これもひたすら怖かった。

本作を語るうえで、香世の強烈すぎるこのような言動は外せないものだろう。時が経った今でも、香世は昼ドラの伝説的キャラクターとして名を馳せている。

ドロドロ展開の昼ドラ代表作品といえる『牡丹と薔薇』。あまりにも現実とはかけ離れているストーリーだが、ドラマだからこそ非日常を楽しめるのが面白いと言えるだろう。

当時、強烈なインパクトを残し社会現象も起こした本作。時を経て2015年には『新・牡丹と薔薇』が「姿形を変え完全無欠の愛憎劇」として再登場。またも昼ドラで放送された。

ちなみにこちらのドラマでも、本家で活躍した大河内さん、小沢さん、西村さんがゲスト出演している。気になる人はぜひチェックしてみてほしい。

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