桑木志帆 悲願のツアー初Vに涙「忘れ物を取りに来た」 昨年プレーオフでV逸の雪辱果たした!

 初優勝を果たした桑木志帆は歓喜のバンザイ(撮影・伊藤笙子)

 「女子ゴルフ・資生堂レディース・最終日」(30日、戸塚CC西C=パー72)

 2位から出た桑木志帆(21)=大和ハウス工業=が4バーディー、1ボギーの69をマーク。通算11アンダーの逆転で、ツアー初優勝を果たした。昨年はプレーオフで敗れた大会でリベンジに成功。ツアーでは惜敗続きだったが、悲願の初タイトルをつかんだ。首位から逃げ切りを図った堀琴音は72で回り、9アンダーの2位。3打差の3位に原英莉花が続いた。54ホールの短縮競技のため、賞金加算は75%に減額されるが、主催者側の厚意で選手への実際の賞金は100%支払われる。

 「去年の忘れ物を取りに来た」。桑木が流した悔し涙は、今年うれし涙に変わった。桜井とのプレーオフの末に敗れ、昨年は打てなかった2年越しのウイニングパットを沈めると、両手を天に突き上げて満開の笑顔。同学年の岩井姉妹、佐久間に祝福されると、実感がこもったように目を赤くした。

 昨季は同大会を含めて3度の2位。あと一歩が届かなかった優勝争いも経験を重ねて、この日はどっしりと構えた。5番は9メートル、9番は13メートルの長いバーディーパットを沈めて単独トップに立った。同組の堀も食らいついてきたが、昨年までなら生まれていたかもしれない焦りはない。「ガツガツいかなくても、安全にパターを決めれば」と心にゆとりがあった。

 優勝が懸かった最後の18番も同じ。右ラフから前方の木が気になるアングルの2打目も「ここは左なら外しても良い」とグリーンを捉えきれなかったが、しっかりと寄せ切った。くしくも、19年大会を優勝した同郷の先輩・渋野日向子も最終日は同じ場所からアプローチしていた。当時、バッグを担いでいた門田キャディーが、今回の相棒だったのは運命的だった。

 最終日の18ホール。今年からトレーナーと隔週で始めたトレーニングによる飛距離アップも実感し、ショートしがちだったパターも強気に、深いラフからもしっかり打った。10アンダーの昨年よりも伸ばした一打は成長の証しだ。

 初優勝で夢が広がる。今年2月にロサンゼルスで合宿。将来的には米女子ツアーへという思いもある。ただ、次の目標は2勝目だ。“シルバーコレクター”は返上。過去の銀メダルの数を超える金メダルへ、突き進んでいく。

 ◆桑木志帆(くわき・しほ)2003年1月29日生まれ。岡山市出身。父・正利さんの影響で4歳でゴルフを始め、岡山後楽館中3年の17年に中国女子アマで優勝すると、岡山理大付高に進学した18年大会も連覇。21年6月のプロテストに一発合格し、同年12月の新人戦・加賀電子カップで優勝。23年は10度のトップ10でメルセデス・ランキング10位となり、初シードを獲得した。大和ハウス工業所属、倉敷芸科大在学中。163センチ。

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