2年前に“号泣”した場所へ 日の丸背負う中島啓太が五輪で締めくくる欧州4連戦へ「メダル目指して頑張りたい」

中島啓太が欧州に向け出発した(撮影:ALBA)

6月30日(日)夜、次週のDPワールド(欧州)ツアー「BMWインターナショナル・オープン」(4日開幕)から8月の「パリ五輪」までの4試合に向け、中島啓太が日本を飛び立った。

羽田空港で取材に応じた中島は6月第1週の欧州ツアー「ヨーロピアン・オープン」(ドイツ開催)以来の試合出場。実はそのあいだ「少し体に違和感があって」と、右足の種子骨障害が判明。その後は検査や軽めの調整、トレーニングも行い、いまでは万全の状態だという。

昨年の国内賞金王の資格で欧州ツアーを主戦場としている今季。3月には「ヒーローインディアンオープン」で同ツアー初優勝を飾り、まずは好スタートを切った。そして、ここから欧州転戦を本格化させていく。「タフなスケジュールになってきますし、ポイントも高くなってくる試合が多いので、ぜんぶの試合を大事にして集中してプレーしたい」と気を引き締めている。

今週はドイツ、次週は「全英オープン」の前哨戦と位置づけられる「ジェネシス・スコットランド・オープン」、そして18日から開催される全英と、3連戦が待っている。「次、早く勝ちたいですし、その中でも大きいトーナメントをターゲットにしながらスケジュールを立てていって、まずは今は全英オープンが控えているのでそこに向けて頑張りたい」と、今季メジャー最終戦に照準を合わせている。

これまで、3年連続出場の全英を含むメジャー大会5回に出場し、一度も決勝の地を踏んでいない。「予選を通過したことがないので、そこは悔しい。どうしても苦手意識を持ってしまうので、メジャーだからといってあまり変えることなく、しっかり自分のゴルフをすることだけに集中していきたい」と、苦い経験を生かしていくつもりだ。

ただし、昨年までとは違う感覚もある。「今までのメジャー大会と違うのは、メジャーの前に2試合プレーするということ。メジャーだけスポット参戦で行くとどうしても意識してしまうところがあると思うので、まずはドイツとスコティッシュで頑張って、3連戦の最後にメジャーがあるというのはすごくいいスケジュールなのかなと思う」。3連戦という日程も今回はプラスに働きそうだ。

そして全英が明ければ、1週空いてパリ五輪が始まる。「開会式も歩きたい」とスポーツの祭典に向けて気持ちは高ぶってくる。松山英樹に次ぐ日本勢2番手の座を射止めて叶う五輪出場。「8年間ナショナルチームとして日の丸のユニホームを着用させていただいて、またユニホームを着て試合に出られるので自覚を持ってプレーしたい」。誰よりも代表の重みを知る中島にとって、2年ぶりの日の丸は感慨深いものがある。

22年9月のプロ転向前、アマチュアとして、日本代表として最後に戦ったのが「世界アマチュア選手権」で、これはパリ五輪会場と同じル・ゴルフ・ナショナルで開催されたもの。「最後に日の丸を背負ってプレーして号泣した記憶があるので、特別な気持ちは入る。もう着られなくなるかもしれないと思って、最終ホールのグリーン上で泣いてました(笑)」という思い出の場所に、今度はプロゴルファー、そしてオリンピアンとして戻ることができるのも何かの因縁かもしれない。

「優勝もしたいし、メダルを目指して頑張りたいです」。欧州4連戦で一暴れをする気持ちはひときわ強い。メジャーの悔しさを全英で晴らし、“代表復帰”の五輪で表彰台の一番上を目指していく。(文・高桑均)

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