【J2「爆発」】仙台、CB菅田の技巧派FWのようなループが決勝点に 成果と課題が相半ばした勝利で4位上昇(1)

CBとは思えない技巧派シュートを決めた仙台・菅田真啓  撮影/中地拓也

仙台は前半だけで3ゴール

成果と課題が相半ばした一戦だった。

J2リーグ第22節が6月29、30日に開催され、5位のベガルタ仙台は29日、19位の栃木SCとホームで対戦した。

森山佳郎監督が指揮する仙台は、19節から3試合連続で引分けている。一方の栃木はJ3降格圏に沈んでいるものの、小林伸二監督の就任後は2勝2分2敗と五分の成績で、直近の3試合は負けていない(2勝1分)。

果たして、3バックが効果的な縦パスを入れてくる栃木に、仙台は序盤から苦しめられる。12分には自陣で直接FKを与え、DF平松航に先制のヘディングシュートを決められてしまった。

3-4-2-1の栃木を攻略するために、仙台は相手のウイングバックの背後を突いていく。27分には敵陣ミドルゾーンでボールを奪い、MFオナイウ情滋が相手3バックの右脇でパスを受ける。ペナルティエリア内で右足を振り抜くと、強烈な一撃が相手GKを襲う。GKが弾いたボールをMF相良竜之介がフリーでプッシュし、仙台は同点に追いついた。

ここから仙台がたたみかける。

29分、CB菅田真啓がワンタッチでセンターサークル付近の相良へ縦パスを通す。このパスで栃木の選手を一気に置き去りにし、相良が右サイドへ流れたFW中島元彦へつなぐ。相手はウイングバックが戻り切れていない。フリーの中島が狙いすましたクロスを入れると、FW郷家友太の背中から走り込んだ相良がダイビングヘッドを決めた。

33分には左CKをきっかけに連続して攻撃を仕掛け、中島の絶妙スルーパスから菅田がDFラインの背後へ抜け出す。背番号5が技巧派FWのようなループシュートを決め、仙台のリードは2点に広がる。1試合3ゴールは今シーズン初めてだ。

■後半は守勢一方となり…

仙台が喫した失点は、ファーサイドからの折り返しがGK林彰洋の頭上を越えるややアンラッキーなものだった。そこからの3連続弾は見事で、前半の戦いぶりは評価できるものだっただろう。

しかし、後半は戦況が一変する。開始早々に栃木FW宮崎鴻のヘディングシュートで1点差に詰め寄られると、試合の流れそのものを持っていかれる。栃木の両ウイングバックが高い位置を取ってくるため、仙台の両サイドハーフが自陣に引きずり込まれ、2トップとの距離が遠くなってしまう。中島と郷家はサポートを得られず、仙台は前線に起点を作れないのだ。自陣から抜け出せない時間帯が続く。

森山監督は73分にDF高田椋汰、MF松下佳貴、MF有田恵人を投入するが、試合の流れは変わらない。3バックとボランチに縦パスを刺し込まれ、内側を閉じるとウイングバックにスペースを与えるという悪循環から、どうしても抜け出せないのだ。83分にはCKから宮崎にヘディングシュートを決められたが、直前にファウルがあったとして辛うじてリードを保つ。後半はワンサイドと言っていいぐらいに押し込まれたが、仙台はどうにか3対2で逃げ切った。

試合後のフラッシュインタビューに応じた森山監督は、「とてつもなく長い後半の45分でした」と切り出し、「後半の入りで相手を勢いに乗せてしまった。耐えるのは得意なところではありますけど、やっぱり2点差で勝ち切らないといけない」と続けた。

経験豊富な小林監督を迎えた栃木が、建て直しをはかっているのは間違いない。栃木は順位を上げてくるだろう。

それにしても、である。後半の試合運びは課題だ。4位のファジアーノ岡山が清水エスパルスに敗れたため、仙台は岡山を抜いて4位に浮上した。次節はその岡山とのアウェイゲームだ。勝点差1の6ポイントマッチは、トップ3に食らいついていけるかどうかの重要な一戦となる。

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