【寄稿】「少年審判と付添人」 立ち直りを支える熱意 柴田守

 県弁護士会の新会長に4月就任した中村尚志弁護士のインタビュー記事に先日、長崎新聞のHPで接し、中村氏が2009年から22年までの13年間、日弁連の全面的国選付添人制度実現本部の委員として国選付添人制度の拡充に尽力されてきたことを知った。
 家庭裁判所に事件が送致された少年に国費で弁護士を付ける国選付添人制度は、2000年以降の少年法改正で段階的に拡充されてきた。同年の法改正では、検察官関与決定をした場合などにおいて、裁判所が国選付添人を必要的に選任する制度が新設され、07年には一定の重大事件について少年鑑別所送致の観護措置(調査、審判のために少年の身柄を保全する処分)をとった場合に、家庭裁判所が国選付添人を選任できる制度が新設された。
 また、08年の法改正では、被害者等による審判の傍聴を許す場合に、家庭裁判所が国選付添人を必要的に選任する制度が新設され、14年の法改正では、07年に新設された裁量的国選付添人制度の対象事件の範囲が拡大された。
 これらの制度拡充の背景には、日弁連や地方の弁護士会の熱心な取り組みが深く関係している。少年鑑別所に収容された少年が希望する場合に弁護士を派遣し無料で面会する「当番付添人制度」は01年に福岡弁護士会が始めた取り組みだが、09年11月からは全国の弁護士会で実施されている。
 日弁連は、国選付添人の対象外の事件などにおいても、少年が希望する場合に弁護士費用を援助する少年保護事件付添援助制度を設けている。この制度の元手は、全国の弁護士が毎月負担する特別会費によって支えられた基金で賄われている。
 少年審判では家庭裁判所が主体となって事実を解明し保護の必要性を判断する。一般的な刑事手続とは違って、付添人は審判の場で弁護人としての役割だけでなく、少年の健全育成にとって最も適切かつ有効な措置をとるのに協力する役割も担っている。調査や審判の過程では、裁判所とカンファレンスを重ねて、少年や保護者に向けた働きかけを行うこともある。少年の立ち直りを支える重要な立場なのだ。
 中村氏は、インタビューで「全ての事件の全ての少年に国費で付添人を付けるべきだ」と主張している。必要的・裁量的国選付添人制度をさらに拡充するべきだという点では賛同される。
 筆者は今年9月に中村氏と同じ47歳になる。同世代の中村氏が県内で活躍しているのはとても刺激になる。さらなるご活躍を期待したい。

 【略歴】しばた・まもる 1977年、北九州市出身。長崎総合科学大准教授を経て、2023年度から独協大法学部教授。元長崎市安全・安心まちづくり推進協議会会長。専修大学大学院法学研究科博士後期課程修了・法学博士。

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