鳥取市で試行「こども誰でも通園制度」保護者の期待の一方受け入れ態勢など課題も

7月1日から鳥取市の3つの保育園で、国が進める「こども誰でも通園制度」のモデル事業がスタートしました。
親が働いているかどうかに関わらず、子どもを保育所などに預けられるというこの制度は、2026年度から全国すべての自治体で実施されます。預ける側の保護者としては、子育て支援の間口が広がる一方、預かる側の保育施設からは不安視する声もあがっています。

鳥取市の美和保育園。登園してきたのは、ここに通う子どもではありません。1日から鳥取市の3つの保育施設でスタートした「こども誰でも通園制度」の利用者です。
男の子は1歳児クラスへ。大勢のマスコミや初めての空間にちょっと緊張気味。いつも園に通っている園児たちと、3時間一緒に過ごします。

「こども誰でも通園制度」は、国の子育て支援策の一つとして、2026年度から全国すべての自治体で本格的に実施することが決まっていて、これを前に全国115の自治体で試行的事業を実施。鳥取市でも3つの保育園が1日からスタートさせました。

新たな通園制度では、保育所などの利用要件を緩和し、親が働いていなくても希望すれば月に一定時間、子どもを預けられるようになります。

現時点の国の指針では、利用時間の上限は、1人あたり月10時間、利用料金は1時間300円です。国は試行事業を踏まえて、2年後の本格実施に向けて、具体的な運用方法などを検討するとしています。試行事業の実施に手を挙げた美和保育園は、新たな制度に期待しています。

美和保育園 麻木美紀園長:
本格実施に向けて試行をまずはスタートさせて、課題やニーズを出していきながら、スムーズに本格実施をスタートしたいと思っています。お母さんやお父さんがリフレッシュしたなとか、次の子育てに向かう活力になれば、すごくうれしいなと思う。

利用した保護者からは、「少し心配だったが、すごく楽しく過ごせたみたいなので良かった」、「ありがたいと思いました。使いたい時に使えるというのが便利だ思いました」との声が聞かれました。

鳥取市幼児保育課 岡本芳奈課長補佐:
すべての子どもが制度を利用して、色々な社会性を身につけたりしていただければ
と思っているので、みなさんの声をたくさん聞くことによって、これからの課題を見つけていこうと思っている。

新たな制度により、育児負担の軽減や孤立・孤独解消などが期待される一方で、課題も少なくありません。

保育士や保護者などからなる民間団体が全国の自治体に調査した結果、制度の本格実施に向けた課題として、7割を超える自治体が「保育士確保などの現場の体制整備が間に合わない」と回答。
また、待機児童などの解消ができていない中での実施に不安を抱える自治体も3割にのぼっています。

実際に、人手不足に悩む保育現場からは、懸念する声も上がっています。松江市のみつき出雲郷保育園。定員90人の認可保育園です。

みつき出雲郷保育園 増岡年子園長:
ゆとりのある人員確保が一番難しかったり、保育の質とか受け入れの状態によってですけど、施設の面積的なこととかが懸念される部分ではあるかなと思う。

保育士の数は余裕をもって配置基準を満たしていますが、新制度が始まった場合、保育の質が担保できない、と不安を吐露します。

みつき出雲郷保育園 増岡年子園長:
慣れないお子さんが、突然集団の中に入ってこられるということになると、人員がそこの専用に取られてしまうということが絶対に有り得る。今の状況では、なかなか難しいかなと思う。預かる側の方のことも少し考慮していただいて、そういう施策が成立するといいかなと思う。

すべての子どもが保育園とつながる機会が保障される「こども誰でも通園制度」。十分な受け入れ態勢が取れるのかという点が、大きな懸案事項となっています。
このモデル事業で出てくる現場の課題を国や自治体と共有しながら、2年後の本格運用に向け、実効性のある制度設計が求められます。

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