災害時の孤立集落支援 ドローンを使った「空からの支援」を考える

元日に起きた能登半島地震から7月1日で半年です。断水など様々な課題がつきつけられたこの地震では、道路の寸断などで孤立した集落もありました。高知でも、南海トラフ地震で同じような事態が想定されます。ドローンを使った「空からの支援」を考えます。

空から見たその海の美しさは、言葉を失うほど。「青い」。出てくるのは、この一言のみです。

高知県大月町、柏島。高知では言わずとしれた青さを持つ海で、様々な海の生き物を見ようと、全国からダイバーが集まります。海水浴客も多く、夏のシーズン中には、一日に、住民の倍以上の人が訪れることも。この豊かな海とともに、人々は生きてきました。

そんな柏島ですが、海に近いからこその課題もあります。それが、自然災害。特に、南海トラフ地震による津波被害の想定が深刻で、町によると、柏島には10mを超える津波の襲来が予想されているんです。

そして、その時、住民たちが陥る可能性が高いのが、「孤立」。

柏島までの道のりは、山際を通る一本道が続きます。

実際に、2018年の西日本豪雨の際には、山から巨大な岩が崩落し、一時的に道をふさいだこともありました。

(“孤立”について柏島の住民は)
「橋が通れなくなったら、孤立すると思う。出ていけれんもんね。寝袋、毛布、食料、何日か着られる洋服、薬などを備蓄している」

その備蓄先というのが、高台にある防災活動センター。避難所ではなく、津波からの避難場所という位置づけになっていますが、孤立を想定し、去年から、各世帯ごとに必要な物資を、衣装ケースに入れて保管しています。元日の能登半島地震を受け、取り組みは加速しました。

(柏島地区 弘瀬修 区長)
「能登半島の立地条件と非常に似通っている。津波が来たら、全て無くなる。家にある物までなくなるので、山に備蓄するものを保管しておかないと、みんなが命の問題が出てくる」

地区として進める、孤立対策。しかし、孤立解消に向けた道路啓かいや、時期によっては観光客の避難者も予想されるなど、孤立した集落を支援するための課題は少なくありません。

(リポート:姫野幸太)
「孤立集落支援の新たな可能性を探る実証実験が行われます。使うのが、物資搬送用ドローンです」

ドローン離陸高知市のIT関連機器販売店、エレパが所有する物資搬送用のドローン。重さ30キロまでの荷物を吊り下げることができ、最大で16キロの飛行が可能です。

県内各地の市町村に、ドローンを活用した孤立集落支援を提案していて、この日行われた、柏島でのフライトが、初めての実証実験となりました。

「高い山の横のところ、こっちの方向」

実証実験には、役場の職員と、柏島の住民も参加しました。離陸した展望台から、防災活動センターがある高台まで、およそ1、5キロを飛行。吊り上げた箱を地上におろし、無事、着陸です。

(エレパ 産業ドローンコンサルタント 川村裕之さん)
「みなさん、お近くにどうぞ」

ほとんどの人が、物資搬送用ドローンを目にするのは、初めてです。エレパによりますと、通常、ドローンによる物資搬送については、様々な規制がありますが、災害時、警察や自治体からの依頼があれば、飛ばすことはできるといいます。

食料や薬などの搬送という使い方もできますが、エレパが提案しているのは、孤立の状況を確認するための通信手段の確立。

衛星通信ができる機器をポータブル電源やタブレットと合わせて運び、その後、孤立地区ごとに必要な物資や薬を支援しようというプランです。

(エレパ 産業ドローンコンサルタント 川村裕之さん)
「通信手段が確立できてないと、その地区の課題、問題点が把握できない。想定していなかった物資が必要になることもあると思う。『何が本当に必要なのか』を把握するのに“情報”が必要」

操作性、安全性、オペレーションの技量。役場の職員、そして、地区の防災に関わる住民たちからは、質問が相次いでいました。

道路が通れなくなり、津波によって船でも近づけなくなったら。「空からの支援」という新たな選択肢に、実証実験を見学した大月町は。

(大月町 冨岡直人 副町長)
「沿岸部の海岸集落というのは、アクセス道が1本か2本しかなくて、ほぼ山をぬったような道なので、土砂崩れなどで道路閉塞される。どうやって、被災したところで、命をつないでいけるか、一段上の対策を講じる必要がある。(ドローンでの物資搬送は)手段としては『最後の手段』になろうかと思う。ただ、運用、運営していくためのオペレーターの育成、災害時にどれだけ確保できるかという課題もあるかと思うが、防災対策の一つとして、今後、組み込んでいけるように考えていきたい」

(エレパ 産業ドローンコンサルタント 川村裕之さん)
「実際の現場を想定したロケーションの場所で実際に飛ばしてみるということが一番重要。この積み重ねが、有事のときの迅速な行動に結びつくと思っているので、こういう機会をどんどん増やしていきたい」

一方、区長の弘瀬さんは、支援の一つとして「貴重な方法」としながらも、「機能のさらなる進化」に期待したいとしています。

(柏島地区 弘瀬修 区長)
「現状に置いている物資が、1週間、5日とあれば、すぐにどうこうということはないだろうが、ドローンの飛行時間、運べる重量、さらに改良されていく状況になれば、地区としても扱えるのではないか。貴重なものになるのではないかと感じている」

能登半島地震でこれまで以上に浮き彫りとなった、孤立集落への対応。地区としての備えや行政からの支援など、様々な方法が模索されていますが、「空からの支援」も、新たな選択肢となりそうです。

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