【シンガポール】新興素材化学、ベトナムに初の生産施設開設[繊維]

ネクストエボが開設したベトナムの生産施設(同社提供)

農業副産物を利用した繊維加工を手がけるシンガポールの素材化学スタートアップ、ネクストエボ(NEXTEVO)は、ベトナムでパイナップルリーフ(葉)繊維(PALF)を利用した繊維素材の生産施設を開設した。投資額は公表していない。繊維業界の持続可能な取り組みを支援する。

ネクストエボは、従来廃棄していたパイナップルの葉を加工し、新たな製品に作り替える「アップサイクル」事業を展開。パイナップルRTS(糸に紡ぐことができる状態の)繊維の生産・加工や、混紡糸、混紡織物などの生産を手がける。紡績企業や糸メーカーなどに向けて、繊維原料から半製品までを提供している。

パイナップルの葉は果実栽培の副産物であるため、繊維を育成するための土地、水、肥料は不要だ。既存の農業を活用して副産物だった葉を資源に変えることで、環境への影響を最小限に抑えることができる。

同社は世界有数の繊維輸出国であるベトナムのドンナイ省に同国初の製造施設を開設。ベトナムの主要港や首都ホーチミン市に近く、付近に繊維メーカーなどが存在するため、コスト効率が高いことが理由だ。さらに、長距離の陸上輸送の必要性が少ないため、温室効果ガスの排出量を抑えられることも背景にある。

ネクストエボは現在、原料となるパイナップルリーフ繊維をフィリピン、インドネシア、東アフリカ地域から調達。今後は、ベトナムとインドからの調達も計画している。

パイナップル栽培の残渣(ざんさ)を燃やしたり腐らせたりするような農業廃棄物の処理方法は、温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)やメタンを大量に放出する。ネクストエボは農業副産物を利用して繊維を生産することで、衣料品業界での温暖化ガス排出量削減に寄与したい考えだ。

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