歌の中でロフト的タテ社会のシゴキを受けている?!
──中尾さんが2019年に4-STiCKSに参加してから5年が経ちますが、そもそもどんな経緯で加入することになったんですか。
中尾:僕は4-STiCKSのことも、高田さんや柳沼さんのことも南野さんのことも実はよく知らなかったんです。
──ピンクムーン(ロフトプロジェクトがマネジメントを手がけるセクション)の後輩なのに?(笑)
中尾:うん。ロフト的なタテ社会の人間関係を高田さんたちの代が止めてくれて、In the Soupまでその波が来なかったんです。それが2016年頃だったかな、柳沼さんがPAの仕事ができる人を探しているということで、金子さん(In the Soupのマネージャーだった金子司)経由でK(草場敬普)が呼ばれたんですよ。その現場でKが柳沼さん始め4-STiCKSの存在を教えられて、後日、Kから「4-STiCKSという先輩方がいたからこそ俺たちはピンクムーンに在籍できたんだぞ」と聞かされたんです。4-STiCKSが礎を築いてくれたことでIn the Soupが活躍の場を与えられたと聞いて、なんかグッときまして。
高田:ホントに? 先輩風を吹かせる面倒くさい奴らが出てきたとか思わなかった?(笑)
中尾:思いませんよ(笑)。そういう柳沼さんとKの出会いがあって、新宿ロフトで柳沼さんを紹介されたんです。せっかくKとも繋がったし、毎年、南野さんの命日に柳沼さんの主催で『MINAMINO ROCK FESTIVAL』が行なわれていることもあるし、Kと2人のユニットで出させてもらって。
──過去のスケジュールを遡ると、それが2017年6月10日でした。その後、2019年の『MINAMINO ROCK FESTIVAL』から中尾さんが4-STiCKSで唄うことになりましたね(当初は4-STiCKS・中尾諭介 名義)。
中尾:2018年までは南野さんの歌が入った音源に合わせてライブをやっていたので、数曲唄ってみないか? と柳沼さんに誘われまして。
──5年も経てばもうゲスト・ボーカルではなく、実質的に“二代目4-STiCKSボーカル”ですよね。
中尾:うん、そうですね。
高田:多角的な活動の中の一環としても、すでにパーマネントなものになっているよね。
中尾:でも4-STiCKSの歌は唄うのが難しいんですよ。生前の南野さんと面識がなかったぶん、歌の中でタテ社会のシゴキを受けている感じですね。「南野さん、これはどこで息継ぎすればいいんですか?!」って(笑)。
高田:まあ、単純にキーも違うしね。そんなの聞いてくれればいいのに何も言ってくれないから、それを見かねて「キーを下げようか?」とこっちが聞いたり。
中尾:急に唄うのがラクになったなあ…とか思ったら、いつの間にか下げてくれてて(笑)。
高田:後々聞いたら「あれはシゴキかと思いました」と言われたけど、そんなキーのことでシゴいても仕方ないから(笑)。
──4-STiCKS唯一のオリジナル・メンバーである高田さんは、中尾諭介というボーカリストをどう見ていますか。
高田:凄くいいボーカリストですよ。南野とはタイプが全然違うし、もっと言えば南野よりも硬派だし、中尾君のほうが歌唱力として味はあります。南野はどちらかと言えばわかりやすいボーカルという感じだったから。
中尾:なかなか南野さんのレベルまで追いつけないですけどね。
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──近年の中尾さんはすっかり4-STiCKSに溶け込んでいるし、出会うべくして出会った印象がありますね。
高田:そうなのかな? 柳沼さんが強引に引っ張ってきた感もあるけど(笑)。
中尾:僕は縁を感じて唄っていますよ。シゲさん(前ロフトプロジェクト代表取締役であり、4-STiCKSのマネジメントを務めた故・小林茂明)のモノマネをするのが柳沼さんは上手じゃないですか、「オネーちゃん呼べよ、オネーちゃん」って(笑)。当時、4-STiCKSがどういう環境でシゲさんと一緒に夢を見ていたんだろう? とか想像しながらやっているので面白いです。
──ピンクムーン在籍時、シゲさんから4-STiCKSの話を聞いたりは?
中尾:何も教えてくれませんでした。してくれてたのかもしれないけど、僕が普段、人の話を聞いてないことが多いので(笑)。
高田:関門海峡まで話が行かなかったんだ?(笑)
──1996年7月にEPICソニー(当時)から発表された『STICK IT OUT!』以来、実に28年ぶりに現メンバーで制作されたEP『果てなき旅の途中』がリリースされるのは、今の4-STiCKSがいかに良い状態にあるかの表れでもあると感じます。高田さんと柳沼さんの中では、このメンバーによる音源を残しておきたいという思いがずっとあったわけですよね。
高田:そうですね。何らかの形で残したいという話がこれまでちょこちょこあったんですけど、具体的なきっかけがなくて。今回は柳沼さんが意を決して「やるぞ!」ということで。それも中尾君というボーカリストの存在があってこそですね。
──実際のレコーディングは取り組んでみていかがでしたか。
高田:作業はとてもスムーズでした。
中尾:雰囲気も凄く良かったし、高田さんも柳沼さんもドラムの憧人君(三隅憧人)も仕事が早かった。
高田:基本的にワンテイクで済ませましたから。たまに少し直すくらいで。
中尾:高田さんはギターにこだわりのある人だと思っていたので、重ねるのにもっと時間をかけるのかと思ったんですよ。たぶん事前にいろいろと考えてこられてたんでしょうね。あと、高田さんのコーラスが入るとグッときたり。あのコーラス・ワークはAfter meの長田(剛)さんを彷彿とさせるところもあったりして、これもピンクムーン繋がりだなと思って。「ハレルヤベイベ」のAメロでいきなりコーラスが入る感じとかが長田さんっぽいなと。
高田:事前にしっかりと準備をしていたわけでもないんですよ。ベーシックを録ってボーカル録りを聴いた後に「ここはコーラスを入れたほうがいいな」とその場で思いつくケースがほとんどで。
──柳沼さんからは「レコーディング中も凄く心地良いGOOD WINDが吹いていました」と聞きました。“GOOD WIND”はシゲさんの頻出単語ですけど(笑)。
中尾:実際、良い風が吹いていたし、それが何よりだと思って。
「空に」の中尾の歌詞に対する高田の妥協なきこだわり
── 一曲ずつ聞かせてください。中尾さんの作詞、高田さんの作曲による「空に」は曲先だったんですか。
高田:曲先です。
──歌詞は天国の南野さんへ捧げたものですよね。
中尾:はい。その前にあった別の曲も南野さんに向けた歌詞だったんですけど、それは自分の中で今一つしっくりこなくて。歌詞がちょっとわかりづらいと言うか、格好つけすぎたと言うか。それを経て書いた「空に」は自分なりに落とし前を付けられたかなと思っています。
──「空に」はだいぶストレートに南野さんに対する思いをぶつけているように感じますが。
中尾:これはね、言わせてくださいよ。今回は初めての経験をいろいろして、高田さんからのシゴキも受けたんですよ(笑)。
高田:いやいやいや(笑)。
中尾:僕は歌詞を書く上で、メロディに対する字数の一文字一文字をあまり意識してこなかったんです。高田さんはこの「空に」に関してはその部分をかなりこだわっていたんですよ。
高田:ああ、確かに。
中尾:「そこは一文字多い」とか。
──吉田拓郎的な字余りを認めなかったと。
高田:曲によっては字余りでもいいんですけど、「空に」に限ってはちょっと違うかなと思って。
中尾:その前に、高田さんは曲だけで8曲作ってきたんですよ。その中でこの「空に」は思い入れが別格にあったと思うんですけど。
──「空に」は悠然かつ雄大なメロディが特徴で、従来の4-STiCKSのイメージを覆す曲調ですよね。そこは意図的に?
高田:大らかな感じと言うか、自分の感情を素直に出せるようなメロディがいいなと思ったんです。あと、あまりややこしいコードは使わないようにしようと。ストレートにA→B→Eみたいな。
──「空に」が今の4-STiCKSを端的に象徴する楽曲であるがゆえに1曲目に選んだんですか。いわゆるリード・チューン的な位置付けと言うか。
高田:曲順の話をみんなでしたときに、柳沼さんは「ハレルヤベイベ」で始まるのがいいんじゃないかと話していたんです。でも中尾君は「一発目は『空に』がいいんじゃないですか?」ということで。
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──中尾さんは、南野さんへ捧げる歌詞を付けるなら「空に」のメロディが良いと感じて選んだんですか。
中尾:いや、そういうわけでもないです。次はこの曲に歌詞を書いてみないか? と柳沼さんと高田さんから提案を受けて、書き進めるうちに「なるほど、これは高田さんが思い入れのあるメロディなんだな」と感じて。でもさっきも言った通り字余りや字足らずを指摘されて、この部分は7文字、ここは8文字みたいに言葉数を決めて歌詞を考えたんです。そういう今までやったことのないことに取り組むと、シンプルな言葉にならざるを得ないんです。縛られれば縛られるほど自分の本心が顕になって、偽らざる気持ちが出てくるんだなと。それは初めての経験で面白かったですね。
高田:「空に」が自分でも思い入れのある曲だったのは確かだし、字数が違うと聴こえ方が変わるんです。ちょっと神経質になっていた時期でもあるんですけど。
──「空に」はお世辞抜きで素晴らしい歌詞だし、「面白いこと なんかやろうや」という部分はいかにも南野さんが言いそうな言葉なので、中尾さんが南野さんと面識がなかったのが尚のこと意外なんですよね。
高田:会ったことはあるんだっけ?
中尾:ないんですよ。ただ記憶にないだけなのかもしれないけど。だけど柳沼さんと高田さんから南野さんの武勇伝や「魂の人だった」とかいろんな話をよく聞いているので、今やすっかりよく会っていた気でいます(笑)。それに、親友だったペテカンの本田誠人が3年前に亡くなって、僕の中で南野さんのイメージが誠人とちょっと重なる部分もあるんです。そんな思いで「空に」の歌詞を書きました。
──高田さんの今の曲作りは、変わらず「信吾ならこれをどう唄うだろう?」と考えながら作ることが多いですか。
高田:そうですね。南野が唄う曲を作る経験しかなかったので。「空に」は中尾君に当てるつもりで作ってはいないかな。もっと前からあった曲なので。
中尾:ああ、そうなんですか。南野さんがいた頃からあった曲?
高田:いや、柳沼さんが唄える曲があったらいいなと思って書いたんだけど、柳沼さんに聴かせたらピンとこなかった曲(笑)。
──中尾さんが唄うべく、曲のほうが唄い手を待っていたのかもしれませんね。
中尾:4-STiCKSの曲の中でもIn the Soupに通じる部分がある曲ですよね。
──In the Soupで言うと「青春とは」を想起させるところもありますし。
中尾:確かに。壮大な感じがあるし、僕の歌もハマってると思います。
「LOVERS DREAM」は“南野100%”の楽曲
──2曲目の「LOVERS DREAM」は南野さんが作詞・作曲で、いかにも南野さんが書きそうなポップでカラフルな曲調ですね。
高田:バンドを始めた最初の頃によくライブでやっていたけど、音源にはしてなかった曲ですね。
中尾:「LOVERS DREAM」を入れるのは自然と決まっていた感じでした。
高田:俺は何も聞いてないけど(笑)。柳沼さんの判断でしょうね。
中尾:「やなモン。(新宿ロフト店長の柳沢英則)が好きな曲だから」とか言ってた気がします(笑)。
──自分で書いた歌詞ではない歌、それも南野節全開の歌は余計に唄うのが難しかったのでは?
中尾:はい。これこそ自分にはないテイストの歌なので。でもライブでは長いこと唄ってきたので歌入れに手こずることはなかったです。
──高田さんのギター・リフが凄まじくキャッチーで、一度聴いたら忘れないフレーズですね。
高田:あのリフはもともと南野が考えてきたものなんですよ。ちょこっと変えてあるけど、大元のメロディは南野が最初に作ってきたのをそのまま使ったんです。
中尾:へぇ。南野さんは単音弾きできるんですか?
高田:うん。拙いながらもね。だからリフも含めて4-STiCKSの中でも“南野100%”と言うべき曲ですね。南野の純度100%。
中尾:じゃあタイトルも「南野100%」に変えましょうよ(笑)。
高田:タイトルも南野っぽいし、「MINAMINO DREAM」でもいいよね(笑)。
──南野さんが曲作りに参加した4-STiCKSの未発表曲は他にもまだあるんですか。
高田:あると思いますよ。もうだいぶ忘れちゃいましたけど。あと、柳沼さんがbillionとして発表した曲もありますよね。
──3曲目の「ハレルヤベイベ」は高田さんの作曲で、作詞は中尾さんと高田さんの共作ですが、どんなふうに仕上げていったんですか。
高田:「空に」とその前にあった曲の詞を付けるときに中尾君の負担がだいぶあったんです。その苦労を減らすべく、曲のテーマをなんとなく書いたものを持っていけばわかりやすいのかなと思って。サビ付近の二行くらいを僕が作って、あとは中尾君に引き継いでもらいました。テーマに合わせて後仕事を全部こなしてくれたという。
中尾:セッション的と言うか、最初の最初はスタジオで言葉が浮かんだんですよね。
高田:そうそう。中尾君が「“ハレルヤ”って言葉を使いたい」と言い出して。それなら“ベイベ”かなと。
中尾:「空に」を完成できたことによって、ちょっと違う方向の曲をやりたかったんです。
──曲の表情は明るく、ちょっとブルージーな要素もあり。
中尾:そこは高田さんのディレクションで。
──中尾さんのハープも良いアクセントになっていますね。
高田:うん。芸達者だからね(笑)。
中尾:よく言いますよ。全然吹けてないなとか思いながら吹いてます(笑)。
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── 一緒にやり出して5年も経てばこうして共作もできるというのがまさにバンド・マジックですね。
中尾:それが面白いですね。通ってきた音楽も全然違うけど、シゲさんとかピンクムーン、南野さんといったいろんな縁によって新しい何かが生まれてバンドが転がり続けるのが面白い。
──この「ハレルヤベイベ」の歌詞のエッセンスを抽出したのが『果てなき旅の途中』というタイトルに結実しているわけですね。
高田:タイトルは柳沼さんが提案してきたんです。中尾君の歌詞を引用してきて、これがいいと。
中尾:曲順が決まる前とかに、スタジオで自分の思ったことを言わせてもらったんです。南野さんがいなくなった後に高田さんと柳沼さんがこうして4-STiCKSを続けていること自体に凄くメッセージ性を感じると。ずっとバンドをやり続けることそのものがメッセージだし、しかもこうして新しい作品を発表するのが凄いことで、そのニュアンスを集約したタイトルにしたらいいんじゃないですか? と僭越ながら言わせてもらったんです。その後、グループLINEで柳沼さんが「『果てなき旅の途中』というタイトルにしたい」と送ってきて、純粋にいいなと思って。「どんな時代も/くたばるわけにはいかねぇ俺たち」という高田さんが書いた歌詞があるんですけど…。
──ああ、あれは中尾さんが書いたんじゃなかったんですか?
中尾:確かに僕が言いそうだなって自分でも思うけど(笑)。でもあれは、高田さんが言うからいいんですよ。ここでバンドを終わらせるわけにはいかないという揺るぎない意志を感じるし、曲作りをしていた頃はまだコロナ禍だったし、余計に「くたばるわけにはいかねぇ俺たち」という言葉が胸に響くんです。
──「必ず伝える 命の限り」という歌詞も、50代になると響きますね。
高田:切実に感じますね。20代で言うのと50代で言うのとじゃ意味合いが全然違う。
中尾:いろんな荒波を乗り越えてきての「命の限り」ですからね。
高田:何かやりたいこと、やり続けることを考える上で、あとどれくらいやれるんだろう? と思うし。
中尾:残りの時間が少ないことを実感する機会が増えるし、人間は本当に死ぬんだなと感じたりもするし。
──3曲とも三隅さんの軽快かつ真を射るドラムが通奏していて、バンドの一体感に大きく寄与していますね。
高田:憧人君はいろんな所で引っ張りだこのドラマーで、凄く上手いし柳沼さんとの息もぴったりだと思います。
中尾:ライブでもバンドを引っ張ってくれてますしね。頼りになるドラマーです。
4-STiCKSの新曲を聴いて南野はどう感じる?
──こうして28年ぶりの音源を作れたことで、いずれは『STICK IT OUT!』以来のフルアルバムを作ろうという思いは?
中尾:まだ早いんじゃないですか?(笑)
高田:フルアルバムを作るにはまだちょっとしんどいかな(笑)。
中尾:もちろん4-STiCKSにとってはこの『果てなき旅の途中』ができたことはとても大きなことだと思いますけど。
高田:凄く大きなことですね。人生の最後に良いものができたなって(笑)。
中尾:勝手に終わらせないでくださいよ。果てなき旅の“途中”なんだから(笑)。
── 一般リリースも控えているので、今後はライブの本数を今以上に増やしたいところですね。毎年6月10日だけというのも寂しいですし。
中尾:6月10日だけにしないように、なんやかんやと柳沼さんがそれ以外にも組んでくれてるんです。僕はIn The Soupやソロ以外にもOne Night Standとかいろいろやっていて、この4-STiCKSでも大いに刺激をもらえて面白いです。
──ボーカリストとして見た、ハチさん(In the Soupの八谷健太郎)とも藤沼さん(One Night Stand、ex.亜無亜危異の藤沼伸一)とも違う高田さんのギタリストとしての魅力とはどんなところですか。
中尾:やっぱり普通じゃないですね。
高田:頼りないギタリストではなく?(笑)
中尾:頼りないことはないですよ(笑)。でも変わってるなとは思う。
──具体的に聞かせてください。
中尾:普通はここでドーッ! と行くところをそうは行かずに、単音で攻めていく感じがあるって言うか。今回のレコーディングでまた印象が変わりましたね。高田さんのアレンジのセンス、コーラスのセンスにグッときたし、無駄なことはしないで即時に判断したことがすべて的中するんです。それを見ているのが面白かったですね。
──高田さんも南野さんに負けず劣らず作風がポップだし、南野さんと中学の同級生だった頃からそのセンスが培われてきたのかなと感じたのですが。
高田:まあ、ポップなのは身に付いたものと言うか。南野とはお互いチェッカーズが大好きだったり、キャッチーな歌ものが好きという共通項はありました。僕自身、小学生の頃に親が聴いていたサイモン&ガーファンクルとかメロディとハーモニーがある音楽を好きだったのも大きいと思います。
──中尾さんの歌声は親しみやすい大衆性の高さが魅力の一つだし、高田さんのギターとの相性も良いと思うんです。だからこの先もっと共作が増えると面白いんじゃないかと。
中尾:そうですか? 非常に勉強はさせてもらってますけどね。
高田:学べたことなんてないでしょ?
中尾:ありますよ。たとえば4-STiCKSの持つキャッチーさとか。
──In the Soupもキャッチーさにかけては引けを取らないんじゃないかと思いますが。
中尾:どうかなあ……。
高田:このあいだ、3人編成のIn the Soupを新宿ロフトで観て、こんなにキャッチーだったっけ? と思ったけど。
中尾:ドラムの吉田君(吉田慎一郎)はメロディ・センスもあってキャッチーなんですよ。僕とKはそういうタイプじゃないし、曲はAメロさえできれば大丈夫、唄いたいことが唄えたらOKみたいな感じなので(笑)。
高田:それは独特だなあ(笑)。
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──高田さんは、シゲさんから「いまIn the Soupっていうバンドをやってるんだよ」とか話を聞いてなかったんですか。
中尾:ああ、それ聞いてみたい。
高田:いやあ…特に聞いてなかったですね。いろんな媒体を通じてIn the Soupというバンドの存在を知りました。
中尾:シゲさんがマネジメントしているバンドだとは知らなかったんですか?
高田:全然知らなかった。
中尾:へぇ! そうだったのか。
高田:南野はもちろんIn the Soupのことをよく知っていたと思うけどね。4-STiCKSが解散した後も、シゲさんを通じてロフトの仕事もしていたから。僕は当時、ライブハウスの世界から一旦離れていたので。
中尾:だけど南野さんもそう素直に僕らのことを見れてなかったと思いますよ。僕が後進のa flood of circleを見るようにね(笑)。まあそれは冗談だけどジェラシーみたいなのはあったし、南野さんもIn the Soupに対して似たような思いはあったんじゃないかと思う。
──今回のレコーディング中に南野さんの存在をやはり意識していましたか。「ここは信吾ならどうジャッジするだろう?」とか。
高田:僕に関しては、ほとんどなかったです。
中尾:僕も特になかったけど、「LOVERS DREAM」を唄ってるときはどうしても意識せざるを得ないって言うか。
──この3曲を南野さんが聴いたら、何と言われると思いますか。
中尾:やっぱり素直に認めないんじゃないですか? 中尾が唄ってるのはつまらないと感じるんじゃないかな。
高田:「まあまあやな」とか、そんな言い方をするかもしれないね。ロフトでいろんなバンドを観ても「華がないな」と手厳しかったし(笑)。
中尾:でもそれでいいと思いますね。南野さんにはいつまでも悔しがらせるくらいの存在でいてほしいので。
──いつの日か新宿ロフトで最新形4-STiCKSのワンマンを観られる日を楽しみにしております。
高田:どうでしょう。それこそ“果てなき旅”ですね(笑)。