「不妊手術からすでに20年以上」旧優生保護法訴訟 3日の最高裁判決のポイントは『除斥期間』原告は「きちんと責任を取ってもらいたい」【記者解説】

旧優生保護法のもと不妊手術を強制された被害者が国に損害賠償を求めている一連の裁判についてです。仙台地裁での全国初の提訴から6年、最高裁は3日、判決を言い渡し司法が最終判断を示します。

原告「人生が終わりです」

後藤舜キャスター:
取材している阿部記者とお伝えします。旧優生保護法を巡る訴訟が3日、いよいよ最高裁判決を迎えます。

阿部航介記者:
仙台の原告の一人、県内に住む飯塚淳子さんは、最大の山場を前に「国がやった問題なので、とにかく今回が最後なので、きちんと責任を取ってもらいたい。謝罪もしてもらいたい」と話しています。

現在70代の飯塚さんは16歳のときに不妊手術を強制されました。子どもを産み育てる選択肢を奪われ「もう本当に旧優生保護法のことだけで人生が終わりです。とても残念です」と語り、旧優生保護法に「人生を狂わされた」と訴えています。

後藤キャスター:
原告にとっては自分の人生を国に問いかける大きな裁判ですね。仙台での裁判のこれまでの経緯を教えてください。

全国初の提訴は…

阿部記者:
原告は、飯塚さんと、同じく県内に住む佐藤由美さんの2人、どちらも仮名です。

旧優生保護法を巡っては全国で38人が国を訴えていますが、こうした一連の訴訟で全国初の提訴でした。2019年の仙台地裁と去年の仙台高裁はともに旧優生保護法を違憲と認めたものの、「除斥期間」を理由に原告2人の請求を棄却しました。

後藤キャスター:
「除斥期間」とはどういうことでしょうか?

阿部記者:
「除斥期間」は「不法行為から20年が経つと賠償を請求する権利がなくなる」という民法の規定で、この場合の不法行為というのは不妊手術のことです。

仙台地裁と仙台高裁は、「不妊手術からすでに20年以上が経っているため、そもそも原告に賠償を請求する権利はない」として原告の請求を退けました。今回最高裁が判決の対象にしているのは、仙台や東京、大阪などで訴えが起こされ、上告に至った5つの裁判です。

後藤キャスター:
仙台以外の裁判では、「除斥期間」についてどのように判断されたのでしょうか?

「除斥期間」分かれる判断

阿部記者:
3日の最高裁判決の対象になっている全国5つの裁判の高裁での判決についてまとめました。
実は仙台以外の4つの高裁では原告が勝訴しているんです。この4つの高裁判決では、旧優生保護法により原告の人権が大きく侵害されたことなどから「著しく正義・公平の理念に反する」として、「除斥期間」は適用しませんでした。つまり、仙台以外の4つの高裁は、「不妊手術から20年以上が経っていたとしても原告は賠償請求ができる」と判断したのです。

後藤キャスター:
最高裁判決ではこの「除斥期間」の適用が大きなポイントになるわけですね。

阿部記者:
原告が勝訴した仙台以外の4つの高裁判決ですが、「除斥期間を適用しない範囲」、つまり「賠償請求を認める範囲」にばらつきがあります。例えば、2022年2月の大阪高裁判決では「2018年の仙台地裁の提訴から6か月間は賠償請求を認める」と判断。
一方で、2022年3月の東京高裁は「2019年の一時金支給法の制定から5年は賠償請求を認める」と判断しました。
最高裁判決ではこうした賠償請求を認める起点や期間に対し統一判断が示される可能性があります。

このほかにも全国では除斥期間に関係なく原告が勝訴している判決も出てきています。最高裁判決で下される「統一判断」の内容によっては、未だ声をあげられていない全国の被害者の救済にも繋がる可能性があり、非常に大きな判決と言えます。

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