天文遺産に認定・日本初の民間天文台「倉敷天文台」の魅力 カフェ併設し観光客も楽しめる場所へ【岡山】

今週末には七夕を迎え、これから夜空を眺めるには絶好のシーズンとなりますが岡山県に民間天文学のルーツとも言える場所があるのをご存じでしょうか。実は、日本初の民間天文台が生まれたのは倉敷市なんです。再来年には100周年を迎えるという倉敷天文台をご紹介します。

隠れ家的なカフェがある「倉敷天文台」1926年誕生

ここは、倉敷の隠れ家的なカフェとして知る人ぞ知るスポットです。

(カフェの客)
「カフェを目的に来られて月も見て、天文台に行って帰る方も多いと思うので」「まさか倉敷のこの町中に天文台があるなんて思ってもみなかった。正直びっくりしました」

ゆっくりとお茶を楽しんだ後には隣接する観望室で星や月を観察することもできるのです。カフェがあるのは、美観地区のすぐ近くにある倉敷天文台です。

倉敷天文台は、約100年前の1926年に誕生し現在、カフェと観望室のほか、かつて建設された天文台のドームも残っています。当時、日本には国立の天文台しかなく、一般の人々は望遠鏡を覗くことができませんでした。そんななか、晴れの日の多い岡山で天文台の設置運動が興り日本初となる民間天文台が倉敷に誕生したのです。

(倉敷天文台 原浩之理事長)
「これはですね、倉敷天文台が設立された時にイギリスから中古の望遠鏡を購入して一番初めに設置された望遠鏡でございます。32センチのニュートン式の望遠鏡で、その当時は日本でもまあまあ大きい部類の望遠鏡でした」

倉敷天文台の理事長を務める原浩之さん。天文台の設置運動に際し倉敷でアマチュア天文家を育てたいと私財を投じたのが曾祖父の澄治さんでした。大原美術館をつくった大原孫三郎の右腕とも言われた実業家。以来、現在に至るまで倉敷の街では頻繁に観望会が開催されるようになりました。

「天体発見王」本田實さんが倉敷天文台の主事を務めた

約100年に及ぶ倉敷の天文文化。なかでも、その象徴が世界的に有名なアマチュア天文家で「天体発見王」と称された本田實さんです。生涯で12個の彗星と11個の新星を発見し長年にわたり倉敷天文台の主事を務めました。冒頭で紹介したカフェは、彼が暮らした宿舎を改装したものです。

(倉敷天文台 原浩之理事長)
「現在でも本田先生のおかげでたくさんのアマチュア天文家が育っているという意味においては、天文台を作った当初の主旨からするとめちゃくちゃ功績があったんじゃないかなと」

設立から約100年ドームで本格的な観測は行われなくなり、望遠鏡や資料を展示する記念館になりました。しかし、曽祖父の志は今も倉敷の街に息づいています。

ここには日本の天文学に貢献した貴重な建物として倉敷天文台の設立当初に使われていた観測室が移設されています。2013年に市の教育委員会が譲り受けて市民に一般公開しました。

(倉敷科学センター 三島和久学芸員)
「日本に数多くある天文台のルーツがこの倉敷の地にあるんだということを、この観測室を通してみなさんに知っていただきたいなと思っています」

この科学センターには屋上に天文台があり、今も天文愛好家や親子連れらが宇宙や星々への存在に胸をときめかせています。

(参加した親子)
「望遠鏡見てどうだった見てどうだった」「楽しかった」「いろんなことに興味を持ってもらえたらいいね」「うん」「楽しいもんね」「うん」

再来年100周年「地元の人や観光客も楽しめる場所に」

日本初の民間天文台として長年、住民や自治体の手で大切に守られ今も天文学の普及に貢献している倉敷天文台。今年(2024年)3月には、倉敷科学センターに移設された観測室も含めて日本天文遺産に認定されました。星々を観察できるカフェだけでなく現在は月に1回、全国にオンライン講演会も発信しています。講師を務めた専門家は天文台の歴史的な価値を力説します。

(京都産業大学理学部宇宙物理・気象学科 河北秀世教授)
「いろんな方がぜひこの倉敷天文台のことを盛り立てていきながら、いろんな方にここを知っていただく。ここの歴史だったり、ここの存在意義だったり、そういったものをしっかり引き出す機会をもっと作っていくのがいいんじゃないかと思います」

再来年には創立100周年を迎える倉敷天文台。原さんは天文愛好家だけでなく地元の人や観光客も楽しめる場所にしたいと意気込んでいます。

(倉敷天文台 原浩之理事長)
「これから100年、200年と、こういう先人が築いたものを継承しつつ、新たな何か価値の創造というものをしていきたいと思っています。もっともっとたくさん倉敷の人そして岡山の人そういった人にここに見に来てほしいし、そういうふうなことの取組みを今着々と進めているところです」

100年の長きに渡り倉敷の街に根付く民間天文学の文化。美観地区を訪れた際にはぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

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