“150年の歴史に区切り” 村上春樹や森鴎外に愛された『長崎次郎書店』が惜しまれつつ休業 熊本

熊本で明治時代に創業した長崎次郎書店(ながさきじろうしょてん)が、6月末で休業しました。全国で相次ぐ書店の撤退。利用者の思いは複雑です。

長﨑健一社長「従業員一同心よりお礼申し上げます。本当にありがとうございました」

休業したのは、熊本市中央区新町の長崎次郎書店です。

創業は1874年(明治7年)。地域の人や読書家だけでなく村上春樹(むらかみ はるき)さんや森鴎外(もり おうがい)などの作家にも愛されました。

100年前の1924年に建った今の建物は、国の登録有形文化財にも指定されています。

しかし長年の歴史に区切りをつけることに。

経営する長﨑健一(ながさき けんいち)社長(44)によりますと、電子コミックの普及や電気代などのコストの増加が要因です。

熊本市の客「聞いたときは頭が追い付かなくて、何日かしてこっちに来てスタッフさんから(改めて休業を)聞いて、やっぱりそうなんだと寂しくって」

熊本市の客「画面で見た方が楽なんだろうけど、本のページの匂いとかも好きだから」

建物のオーナーで2階で長﨑次郎喫茶室を運営する長﨑圭作(ながさき けいさく)さんも。

長﨑圭作さん「薄い利益の中で(書店を)経営していくのは難しいんだなと感じましたね」

全国で書店の廃業が相次ぐ中、「休業」とする長崎次郎書店も再開の見通しは立っていません。

最終日には、別れを惜しむ人が。

長﨑社長「ありがとうございました」
「頑張ってね」
長﨑社長「頑張ります」

長﨑次郎喫茶室と上通の長崎書店は今後も営業を続け、長崎次郎書店のある1階は文化の発信地としての活用が検討されています。

長崎次郎書店、また会う日まで。

書店保護のための国の対策

全国的に書店の数が減っています。書店が一つもない自治体は2年前の456市町村から26増えて482市町村になっています。※2022年9月時点と2024年3月時点の比較

出版文化産業振興財団によりますと、熊本県内でも45の自治体のうち21の自治体で、書店が一つもない状態で、「無書店率」は46.7%、全国ワースト5位となっています。

【「無書店率」ランキング】
1.沖縄県 56.1%
2.長野県 51.9%
3.奈良県 51.3%
4.福島県 47.5%
5.熊本県 44.4%

そこで書店保護に向けた動きが取られています。

経済産業省は今年3月、書店を支援するためのプロジェクトチームを作りました。

一方、フランスや韓国でも書店保護のための対策が取られています。

韓国では学校図書館などの公共施設が書籍を買う際は、地域の書店での購入を優先するよう勧告。また、フランスではネットで書籍を販売する業者に対し、配送料の最低料金を定める法律を制定しました。

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