金属行人(7月31日付)

 「最初に乾いた手で、次に水で濡らした手で触ってみて下さい」。そう促されて試したのは、感電の怖さを安全に擬似体験できる装置。恐る恐る手を伸ばし、装置に触れると、一瞬、手にビリッと電気が走るのだが、比べると明らかに濡れた手の方の衝撃が強い▼訪ねたのはJFEスチールの東日本製鉄所京浜地区にある危険体感施設「安全考学未来館」。体が濡れていると、人体の電気に対する抵抗が下がり、人体に電気が流れやすくなる。そのことを身をもって学んだ。汗で濡れていても同じことで、だから一般的に夏は感電災害が多いという。汗をふき、服を着替える作業を小まめに行うことが大切だ▼バーチャルリアリティーを活用した最新の安全教育も試した。案内されたのは黒いカーテンで仕切られた畳8畳ほどのスペース。専用の眼鏡をかけると、目の前に三次元CGの「現場」が現れる。床の踏み抜きを体験するプログラムでは映像に連動して床がガクンと下がる。落ちていく感覚は生々しい▼こうした危険体感は多くの鉄鋼・非鉄金属企業で採り入れられている。体が覚える「ヒヤリ」や「ハッと」は苦くても思い出すたび効用のある妙薬だろう。お持ちの方には、熱中症対策の水分、塩分と合わせ、ぜひ毎日の服用を勧めたい。

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