確実な守備で今季は77試合に出場
今季のセ・リーグは例年以上の混戦模様が続く。3年連続のクライマックスシリーズ進出を目指すDeNAでは、熾烈な内野のポジション争いが繰り広げられているが、その中で存在感を増しているのが3年目の柴田竜拓だ。確実な守備が評価され、今季はここまで二塁、遊撃、三塁で78試合に出場。このまま順調にいけば、昨季の88試合を超えることは確実だ。
國學院大から2015年ドラフト3位でDeNA入り。ここまで順調なプロ生活を送っているように思えるが「1年目は、正直何をしていいか分からなかった」という。
「どういうことをしていけば上手くなるかが全然分からなくて、ただ野球をやっていただけ。メニューをこなして、ジムに行って…って、そんな感じでした。でも、それじゃ上手くなるわけない。当時は、考える力もなにもなかったんです」
このままじゃ終わるな――。後半を迎える頃に、ふと心に危機感が沸いてきたという。元々守備には自信があった。「守備はできて当たり前だと思われている。自分の中でも当たり前にしていかなきゃいけないこと」と言い切る。そこで取り組んだのがバッティングだった。
身長167センチと小柄な体を生かした打撃を意識。「体の使い方を考えるようになってから打撃がよくなってきたと思います」と話す。今季は打率こそ.211と奮わないが、出塁率は.326と健闘。昨季は248打席で17四球だったのに対し、今季は174打席で22四球と、選球眼は着実に改善されている。「打率や出塁率は大事ですけど、犠打、フォアボール、打点、得点といった減らない数字を増やしていくのはいいことかなと思います」という言葉を、打席でしっかり実践している。
新人研修会で聞いた山本昌氏の言葉「プロでやっていくために…」
地道に積み重ねることが、柴田の基礎を作った。大学2年の夏、練習中に体力が持たず、まったく動けなくなってしまった。2年春から試合には抜擢出場していたが、練習を外された。「とにかく練習不足だった」と当時の様子を悔しそうに振り返った柴田は「そこからめちゃくちゃ練習をしました」と、人一倍の努力を重ねた。その結果、大学3年時には侍ジャパン大学代表にも選ばれ、プロ入りを意識することにもつながった。
プロ入り後も努力を怠ることはない。「やっていくしかない。こんな世界でやれるなんて、本当に限られた人だけだと思う。普通以上のことをやらないと残っていけない」と強い決意を見せるのは、新人研修会で聞いた山本昌氏の「プロでやっていくために努力するのは当たり前」という言葉が印象に残っているからだ。聞いた当時以上に、3年目になった今、普通のことをしていては活躍できないと実感している。
目指すは、もちろんレギュラー奪取だ。
「他人の結果を僕は左右できない。僕が自分自身のやるべきことをやって、結果を残すことが一番かなって。ライバルですけど、共に勝ちに向かっていく仲間。自分自身が成長していくしかない。それが一番の近道だと思います」
両親から教えられた「謙虚な気持ち」「感謝の気持ち」を忘れずに、今日もグラウンドでアピールを続ける。(白井京子 / Kyoko Shirai)