<隠れた名盤> Wink『Nocturne~夜想曲~』 繊細な歌声による気品、これぞ“Winkイズム”

Wink『Nocturne~夜想曲~』

 デビュー30周年を記念し、88年から95年のアルバム15作が高音質CDとして復刻。無表情ゆえ耽美な世界が際立った初期、ナチュラルな女性像を打ち出した後期に人気曲は多いが、その過渡期となる92年発表の本作を紹介したい。

 前半の8曲中、冬らしいラブ・バラードを3曲挟みつつ、残り5曲の楽曲はいずれも危険な恋がテーマ。「指輪をはずす覚悟」「一度知った罪の味」「ダメと言ったはずよ」など及川眠子による歌詞は、静かだった女性が突如意志を持つようで妖しさが倍増し、ハードなギター演奏もそれを煽るが、二人が繊細な歌声を貫くことで気品を保っている。これぞ“Winkイズム”だろう。 また、ラストの2曲は60年代の邦楽曲をJ-POP風にアレンジ。特に『時計をとめて』は、星空を回遊するようなバラードだが、デュオの活動休止や彼女らのプロデューサーで本作詞・作曲の水橋春夫の逝去など、様々な出来事に想いを馳せ、切なくなる。それでも、名作は語り継がれることだろう。

 本作を聴けば、先入観を持たれた際に、どう努力して脱却すれば良いかというヒントが得られるはず。

(ポリスター・3000円+税)=臼井孝

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